第四十四話 追跡者
「んで、その小型艦に執事とターゲットは確かに乗ったんだな?」
そう確認をしているこの男、名をパスブルクという。
「はい、隊長。ただ、その小型艦かなり変な形をしてまして……」
「艦長の名前は?」「モブという名でした」
(知らない名だな)
「護衛には個人でA級傭兵の白刃フランが居ました、一人で艦隊に匹敵する戦力です」
「やっかいだな、つかなんでタイミングよくそんな傭兵雇えてんだよ畜生……」
思案を巡らしながら、考え込む隊長を見つめる隊員達。
「相手はかなり早く、ついていけないものが出始めております」
嘘だろ、中型の一世代前の型とは言え。小型艦相手に速度で、置いてかれそうになるなんて。
「待ち伏せに切り替えて、どっかでのポイントまでワープしかあるまい。問題は、どのポイントでという事。予想をしくじると、一気にデメテルまで着きかねないぞ」
手分けしたい所だが、こっちも数はそんなに揃えられない。
「白兵戦はほぼ無理、速度があれだけ出るなら包囲する必要があるが……」
足をリズミカルにパタパタとやりながら思案するが、妙案は出てこない。
「報告します! ターゲットを乗せた艦は進路をクレイナー方面に取りました!!」
敬礼した一人の部下が、入り口で完結に報告をいれると思わず顔がにやける。
「脚に自信があるのだろうが、墓穴を掘ったな!」
というのも、今いるポイントからデメテルまではメジャーなルートは五本ある訳だがクレイナー方面はいわゆる最短ルート。
では、何故メジャーなルートだけで他に四本もあるのかといえばクレイナー方面にはデメテルまで衛星や中継港等の着艦できる場所が全くない。
航路とは名ばかりの、宙域を突っ切っていくルートだからだ。
特に、ソネンフェルド方面のルートは追跡側からすれば最悪も良い所で。他の艦が密集している為に、下手な武装を使えば即刻星間問題になるような場所を通る。
次点でヤバいのは、ソートン方面のルートであっちは紛争地帯だ。
こんな艦隊率いていこうモノなら、全方位からシャワーのように攻撃を浴びる事になる。
それらに比べたら、殆ど何もない所を飛ぶクレイナー方面ルートはこっちとしてもやりやすい。
遮蔽物すらない場所だが、向こうが小型でこっちが中型の艦隊なら最悪こっちは味方を盾にできる。
「全艦通達っ! ワープスタンバイ。ポイントは、クレイナー方面。距離三万、小惑星帯の手前で待ち伏せするぞ」
こっちの数は、中型シャピロ二十。小型一機ごときに後れをとってなるかと息巻くパスブルグ。シャピロは、中型とは言え戦闘艦。武装も次元潜行型ミサイルや粒子砲などを備えており非常に豊富。余談だが、プレクスの様に生活空間にリソースを割いている訳ではないので快適度はお察し。
対人でフランには勝てないだろうが、艦対艦の戦いならばと勝利を疑わない。
「ゲート開きました! 随時、移動を開始します!!」
慌ただしく入れ替わる様に別の部下が、報告をいれパスブルグが頷いて敬礼を返した。
「必ず、到着を阻止してやる。議会に出席させてなるものかっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます