第四十一話 実用主義

迎えに行ったモブとフランが、少女と執事をプレクスに案内し執事はぽつりと言った。


「これが、A級傭兵が乗る艦。プレクスですか……」


推進機が全部可変で、装甲も可変とは。大きさはバス型キャンピングカー二台分と言った所。武装が殆ど無い代わり、防壁システムや小回りはかなり良さそう。



元軍人の執事は眼を細め、心の中で思う。


艦としてはかなり小型だが、墜とすのはかなり難しいだろうと結論づけた。


モブに内部の客室に案内され、その内部に度肝を抜かれ。


(下手な宿泊施設並ではないか、これだけのモノを置いて平気な程の重力機や平行機を積んでいるという事だろうが。ボロ艦というのは、やはりカモフラージュか)



「俺とフランは、自己紹介省くぜ。こっちはクルーの響、そっちはフランの娘だ」


居住まいを執事が正すと、横の少女もきちんとした礼をした。


「これから、デメテルまでお嬢様共々お世話になります。私、執事のセリグと申します。こちらがフェティお嬢様です」


フェティが一歩前にでると、ぺこりと頭を下げた。


「フェティです、よろしくお願いします」


モブは、部屋の説明を始める。


「一応、説明だけさせてもらう。見ての通り、セリグさんとフェティちゃんはここの部屋を使ってもらう。この後、トイレとシャワーと医療ポッドに案内するが。うちで期待してほしくない点は、料理だけだ」


なんせ、誰もできないしなと肩を竦め。セリグも、キッチンと材料さえ用意して頂けるのなら私めがご用意しても構いませんよと微笑む。



(小型艦に水回りと医療ポッドがあるだと……?)



無いのが普通で、あってもバキュームとかだ。


(期待できないのは、攻撃力と料理だけ)


「お嬢ちゃんには興味がないかもしれないが、映画も数本あるから見るならそこの小型デッキ使ってくれ」


(小とは言え電源が部屋にあるだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!)


顔に動揺が出ない様精一杯奥歯を食いしばりながら、セリグは微笑み続ける。


「普通そういうのって、エネルギーの無駄遣いだって言って殆どの艦ではご法度な筈ですが」


モブと響が、え?みたいな顔をした。


そこでフランが苦笑しながら、「艦長がいいって言ってんだから、この艦ではつかっていいんじゃねーか?度を越さなければさ」


と通信機器を使うようなしぐさでセリグに合図を送り、セリグもあぁ……成程そういう意味ですかと頷いて。「ではありがたく、使わせて頂きます」と返事をしてモブと響もほっと胸を撫でおろした。



元軍人のセリグからしたら、傭兵や艦族が乗る艦というのは基本もっと汚かったり設備がなかったりとにかくコンパクト一辺倒である事も多い。


「フォトン型バリアを展開すると、通信系は遮断されるから。通信系を使うなら、バリア無い時にしてくれよ」


(これは思った以上ですね)


「予定としては、デメテルまで三週間前後を予定してる。何か質問は?」



(え? 早すぎね?これ小型艦ですよね?)


「取り敢えず、設備を見せてもらってからでいいですか?」

「OK、まずは医療ポッドからだな」

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