第四十話 ハリボテ

「かぁ~、なぁフラン。断られたくなくて、大物っぽく喋っては見たがどうだったかな」

モブは艦に戻る早々、まるで溶けかけたアイスが地面に落ちた様に転がった。


「いや、あれだけ何も聞かず引き受けるって堂々言ってりゃ相当自信がある様にしかみえねぇって」


「艦長、普段と違ってかっこよかった」とシャリーも眼をキラキラさせて言ったがモブには逆効果だったようで。


「それ、普段の俺はダサいって事じゃねぇか……」


響は、「俺達がかっこいいわけないじゃないですか」とボヤキながら肩を竦める。



「んで、改造の進捗はどうなんだよ」響に尋ねた。



「使い捨ての五連加速装置と、言われた通りビップの部屋だけ小型のスタビライザー仕込んで宙返りにベリーロールなんかやっても揺れも感じない様にガチガチに固めてあるッス」

指を折りながら、頭に思い浮かべつつ響が説明し始める。


「更に、シフト型の可変物理装甲を六枚重ねて外装はフォトン粒子型バリアに有酸素生成装置も組み込んだッス。改造費で二百万以上飛ばして、後は絨毯とかベッドとか入れたんで俺と艦長の報酬は実質ゼロの変わり下手な大型艦より快適にしといたッス。飯だけはいつものキッチンで作るんであれッスが」


毒にまみれた中に突っ込んでもエネルギーが尽きなきゃ二週間は維持できるっスよ。肝心のエネルギータンクそのままなんで無理は出来ねッスけど。


「呆れたやつらだな、お前ら」フランはそれを聞いてくつくつ笑った。


「ねぇ、それってどんなものなの?」とシャリーがフランに尋ね、フランが笑いをこらえながらもシャリーの質問に答えた。


「まず、シフト型の可変物理装甲ってのは鬼瓦みたいに装甲が重なってかりに装甲の役目を果たさなくなっても他の場所から装甲を文字通り可変させる事で防御力を維持する装甲の事だな。大型戦闘艦とかの粒子系ライフルや遺産でも出て来なきゃまずその装甲だけで凌げる……んだが値がはりすぎるんで普通の小型艦にはまずついてない」


維持費や修理費もバカにならないしな、あれと苦笑し。モブも調子に乗ってシャリーに説明し始める。


「それが飛んできたら、フォトン粒子型バリアと有酸素生成装置で凌ぐ感じだな。膜をはる感じになるから大抵の攻撃は大丈夫だ。どっかのクレズみたいに摩訶不思議理論で膜の中攻撃されりゃ別だが」


「アンリクレズです」と素早く突っ込みが入るが努めて無視した。


それに響が笑いながら、爆弾情報を投下した。


「可変装甲で一番守りが固いのは翼と推進機にしたッスから、大型艦並みに硬いのに速さと小回りは黒い虫並っスよ。攻撃力は、相変わらずほぼゼロッスけど」


それが判ってるから、思わずフランが笑っちまったって事さとモブがシャリーに優しく笑いながら言った。


「ホント、下手な中型艦より安全じゃねぇか」「信用は、金で買えねぇんだよ。大丈夫ですって大見えきって備えないのはアホだろが」「いや、確かにその通りなんだけどさ」


ハリボテはハリボテらしく、急造仕様でも備えとくもんさと響とモブがハイタッチしているのをみて。フランがシャリーにこう言った。


「信用は金で買えない、至言だな……。シャリー、やり方はともかく今の言葉は覚えとくといいぜ」


フランは、それが出来てる奴は殆どいないけどなと言い。シャリーは、ゆっくりとうなづいた。

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