第三十八話 塩漬け依頼
「てな訳で艦長、早めに返事を持ってかなきゃいけないんだ」
傭兵ギルドの支部から帰って来るなり、モブと響に依頼の話をすると。
「傭兵ギルドがエネルギーつけて、前金で六百万も出すだぁ?どう考えたって厄介ごとだろそれ、前金だけでもしょっぱい艦なら買えちまうぜ?」
そこへ、シャリーがモブに尋ねた。
「艦って、六百万位で買えるんですか?」自分が一時期艦族になろうとしていたのだから気になるらしく眼を輝かせていた。
「あー、プレクスより設備がさらに無くて小型のやつならワンチャン中古探せばって感じかな。やってみれば判るが艦だけじゃなくとめる費用やエネルギー後は、食料や水なんかも積まなきゃいけねぇから。艦は基本デカい方が有利だが、デカいとそれだけで維持費が嵩むんで兼ね合いが難しいんだ」
頭をかきながら、モブが言うと響もシャリーの頭を撫でながら。
「そうっスね、だから独立する気なら二千万か、三千万貯めると良いっス。後、メンテンナンスとかも自分でできないと費用がかさむから一杯勉強するっス」
自分達は、艦を組み立てるためにしこたまバカな頭を駆使して試行錯誤して何度墜落しそうになったか判らないような思い出を一杯持つ二人はシャリーが知ろうとする事を微笑ましく思いながらそう言った。
「一応、艦長にお伺いを立ててくるという体で保留にしてもらってんだ。どうするかだけ決めてくれ」
腕を組みながら「燃料付は魅力的だな、六百万を四で割ったら一人当たり百五十万だし。そんだけありゃ今からさらに改造して二人分の居住スペースやら食料やら水を積んでもおつりがくる。ただなぁ……」「気前良すぎて逆に不安何スよね」
「一応、傭兵ギルドのランク指定付きだからじゃねぇかなとは思ってる。ほら、傭兵ギルドのランクは戦闘力や実績が基準だから。個人で高ランク持ってる奴なんかほぼ居なくて、艦隊や船団のランクをさすから。相場としちゃ少し安い位だぜ?」
それを聞いた瞬間、モブと響の眼が点になる。
「つまり、個人で高ランク持ってる奴の戦闘力は艦隊並って事かよ」
「それって、フランさんが高ランクだって言ってるッスよね。全然聞かずに今まで来たけどどれくらいなんスか」
そこへシャリーがフランと響の顔を視線で行ったり来たりしながら、意を決したように響に言ってしまう。
「Aって言ってたよ」「Aッスか?!」
「俺は今片腕だから、戦闘力としては大分心もとなくなってるけどな」
カラカラと笑うフランに、響が道理で気前よく奢ってくれるはずっスよ。俺らと全然金銭感覚違ってるのも納得ッスと苦笑しながら。
モブがそれでも「最初の約束は、山分けだからな。当然、シャリーにもフランにも同じでいく」と真剣な顔で言えば「判ってるよ、この艦のってる間はそれで世話になる約束だしな」
それはそうと、その塩漬け依頼受けるなら内装や設備を増やさなきゃなぁ……。頭が痛い、と悩むモブ。
「四人で飛ぶ気で直したッスからね、こんなド田舎の衛星で改造の材料集めきっても改造しきるまでに四日は欲しいッス。まぁ俺達からすれば多少キナ臭くても、そんだけの前金約束してくれるなら受けない理由が無いっスからね」
それをきいて、フランが溜息をこぼしながら思わず。
「四日で改造ってキャンピングカーでもそんなに早くいかねぇだろ、ネジ一本間違いがあっても爆散する艦でその速さは驚異的過ぎんぞ」
「慣れてるだけっスよ」と響が苦笑し、モブも「慣れたかねぇけど、ひでぇ目には沢山あって来たからな確かに」と響に突っ込む。
「なぁ、シャリー。少なくとも修理屋や製造屋としてのこのお兄さん二人はクッソ優秀だから沢山勉強させてもらいな」
とフランが背中を押して、「シャリーちゃんなら、いつでも歓迎っスよ」と響が笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます