第三十七話 人工衛星ホックリラリ
係に誘導され、七百八十八番にプレクスを着艦させると早速艦を降りた二人は他にもまずい所がないか点検を始めた。
その間、フランとシャリーは暇になるので食料や水の補充を先に済ませようと簡易的な店が立ち並ぶ区画に向かう。
「とりあえず、今日中に点検終えるぞ。長居はできねぇからな」
「判ってるッス、といっても俺の方は宇宙でも大分チェック出来たんで艦長程作業量は多く無いッスが。後は、破片の分析でも根詰めてやることにするッス」
俺達をこんな目にあわせた、こいつの正体って何なんだろうな。
そんな事を言いつつも、ちゃんと手は動かしていたが……。
「フランは傭兵ギルドの支部に寄るっていってたが」「本当頼りっぱなしっスね」
「あぁ、頭が上がらねぇ」
二人はお互い、星に降りた時しか使えないインカムで話しながら自分の仕事はきっちりこなしていて。
「昼は、シャリーちゃんが握ってくれたおにぎりっス」「そりゃ、楽しみだ」
一方その頃、フランとシャリーは早々に補充を店に頼むと傭兵ギルドの支部に来ていた。
「A級の白刃フラン、こっちは娘のシャリーだ」
身分証を出すと、受付の眼が限界まで見開かれた。
「ご無事だったのですか!?」「あぁ、腕一本無くなっちまったんで休養してたんだ」
そういって、自分の隻腕を反対の手で指さした。
「そうでしたか、お仕事でございますが宜しければボードのモノではなく。受けて頂きたいものがございまして」
ほうと、フランが体をのりだす。「金額は?」「前金で六百万、成功報酬で一千万。運ぶのは、人を二人。受けて頂けるならば、前金の他にギルドからエネルギーをフルまで積む事を約束致します。一週間以内ですが、当ギルドでクライアントの条件であるA級以上または戦闘力が同等以上ある傭兵が居ない為に当ギルドとしても困ってまして」
そういって、受付は助かったと心底胸を撫でおろしていた。
「今、俺は艦に世話になってるから。艦長に一度話を持ってく、返事は最速で明日。最長で明後日、そん時に目的地も教えてもらえると助かる」
「かしこまりました、是非受けて頂けると当ギルドとしても助かります。なんせ、こんな弱小衛星ホックリラリにA級の傭兵が立ち寄る事なんてほぼありませんし、地元のギルド員はほぼC級以下ですから」
そういって、受付が肩を竦めると。何人かの傭兵は、罰が悪そうに酒をあおった。
シャリーは、フラン以外の傭兵が怖いのかずっとフランのコートを掴んだままだ。
「大丈夫だ、シャリー。あいつらこえーのは面だけだからな」
フランは優しい顔で、シャリーの背中をさすりながら傭兵ギルドの支部を後にしつつ。
その背後の受付が、思わず苦笑いしながらぼそっと。
「実力主義の傭兵ギルドでAって事は、ここに居る全員相手でも秒殺できるでしょうに。娘の前だからって、優しくおどけちゃってさ」
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