第三十六話 欠片

あの後、フランとシャリーにお湯が使えなくなった説明とか色々した後。

何かの、欠片らしき飛んできたものを回収した。



「まぁ、湯が使えるようになったのは最近だしな。前みたいにキッチンで沸かした湯をもっていって水で薄めるさ」


フランは苦笑いしながら、今はシャリーが手伝ってくれるからマシだがと自身の無くなった片腕をチラ見した。



「にしても、原因作ったこれ何なんスか」


見た事もない、金属片っぽい何かを手で光にかざしながら響がぼやく。


「おめーに判らねぇんじゃ、俺にだって判らねぇよ」


自分達が見た事も無い金属で、フランにも見せたが「俺なんかもっと判らねぇよ」と鼻で笑われた。



「センサー掻い潜って、防壁も簡易とはいえ突破してきたこれは相当速度が出てたはずだ。それが、艦内を貫通じゃなく都合よく停止するもんかね」



「かといって、こんな破片じゃ弾丸にはならないっスからね」


「どっかの艦がドンパチやって、飛んできた破片だっていうのなら俺達が見た事ねぇってのはおかしいし、こんな隕石や宇宙ゴミなんかある訳ねぇ」


この二人は、ゴミの山から艦を一から作った。つまり、残骸という残骸は見慣れたものな訳で。知らないものがあった事で、まだこの宇宙は広いなと二人して首を捻っていた。


「まっ、詳しい事は港に降りた時にでも分析してみるか」

「そうっスね……、発電系と推進系をやられなかったのはせめてもの救いッス。そこをもしやられてたら、宇宙空間で修理する事になってもっと大事になっていたッス」



「修理っていったって、内側のどっかを流用する訳だしな。何も削らず、支障がでないのなら不幸中の幸いって奴だ」


まっ、こんな事もあらーなと笑い。シャリーも、ここ最近緊張が取れてきたのか少しづつ笑う様になっていた。



「んで、肝心の港まではどれ位あるんだ」「目的地まで行くなら後二週間、降りれそうな星にエネルギー消費覚悟で降りるなら四日程いったトコに人工衛星の中継地点があるッス」


「ホント、じり貧だなお前ら」「うちらは、基本自転車操業ッスよ。悲しい程に」

「泣き言言っても始まらねぇから、今決めんぞ」


そういうとモブが、紐を握ってずいっと前に出した。


「印をついた奴が決めろ、誰も印がついたやつ引いて無きゃ俺が決める」


フランとシャリーの眼が点になり、飽きれた様に一言言った。


「お前ら、いつもこんな決め方してんのかよ……」


「つい最近まで二人でやってたんで、これがしみついてるッス」


シャリーも一本引くッスよと響が背中を押し、おずおずと一本引くが印の無い紐だったのでシャリーはほっと胸を撫でおろす。


それを、フランと響が微笑ましく眺めながら響も一本引くがやはり印の無い紐だった。


「つまり、俺か艦長が当たりな訳か」と思い切りよくフランが紐を引いて、赤い印があった。


「じゃフランが決めてくれ、人工衛星か次の星か」

「人工衛星にしようか、ただでさえボロ船なのにこれ以上心配しながら航行はきつい」


了解っとモブが、進路を変更し近場の人工衛星ホックリラリに向かう事を決めた。


「思い切りがいいな」「それで生き残ってきたもので」



フランがニヤリと笑えば、モブもわざとらしくにっこり笑った。


「確か、ホックリラリには傭兵ギルドもあったはずだから俺も仕事を探してみるよ。運搬系のやつ限定でさ。シャリーは俺と一緒に連れてくが問題ないよな?」


助かるよと、モブと響が言ってメーターを見つめながら。


「あれだけパンパンに入れてもらったのに、これだもんなぁ……」

「世知辛いッス」


二人して遠い眼になった。

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