第六話 ジャンク街
「船の増設はいいとして、レーザーブレード位は護身用にもっとくか。後は、掘り出し物があれば嬉しいな。特に、空調や冷暖房はいい加減ガタがきてやがるし」
「にしても、ここはすげぇな」「フランはこういうとこ来た事はねぇのか?」
生憎だが、全然ないと手をふる。だから余計に楽しみだと、モブの隣を歩きながら言った。
「こう言うとこは、表通りにはあんまり良いのは置いてないんだよ。表ってのは家賃が高い、普通の店なら売れてるからいいものを仕入れてるっていう風にも取れるんだがここはジャンク街だ。どの道保証なんかあるわけねぇ、となれば当然その利益を出す為にやる事は……判るだろ?」
モブは奥まった薄暗い路地に入っていくと、フランを手招きした。
「あん? モブじゃねぇか。後ろのそいつは誰だ?」「うちの、新しいクルーだ。ヤンに顔通しとかねぇとおつかいも頼めねぇからな」「ヤンの兄貴なら上に居るぜ、さっき帰って来たとこだ。相変わらず、運がいいな」
そういって、扉一つ分の厚さの細いビルの階段をあがっていく。
「今の知り合いか?」「知り合いなのはヤンの方だな、奴はその腰ぎんちゃくかなんかだよ」
階段を上がって直ぐ、手前から三つ目の扉をコンコンとリズムよく叩く。
「おう、へえんな」「よぉ、まだくたばって無かったのかヤン」「まだくたばって無かったのかはお互い様だ、所でその後ろの奴は?」「うちの新しいクルーだよ、フランってんだ。もしかしたら、お使いでも頼むかも知れねぇから顔通しとこうと思ってな」
上から下までじっくりとヤンがフランを眺めて、一つ頷いて判ったと言った。
「にしても、お前ん所にクルーを雇う余裕なんてあったんかよ」「雇うというかは、同盟みたいなもんだ」「そりゃ結構な事だな、お前より多分このフランって奴は強いぜ?」
直感でヤンがそう口にし、一瞬だけ右眉を僅かにあげた。
「元戦闘員だそうだぜ?ヤンおめーも変に吹っ掛けて怒らせない様にしろよ。店ぶっ壊されても知らねぇぞ」「安心しろよモブ、俺はヤバそうなやつからはボッタくらねぇからよ」「なんだそりゃ、ひでぇな」
「レーザーソードは置いてるかい?」フランがそう聞けばヤンが親指で店の一角をさしてニヒルな笑顔で答える。
「うちに置いてあるのは、そこので全部だ。値札はついてるから、お眼鏡にかなう奴があったら買ってくんな!」
「俺んときとは随分対応に差があるじゃねぇの」「金もってねぇやつは客じゃねぇからな」
フランは、一本一本手に取って確かめ「これとこれもらえるかい」と二本のソードをレジに置いて自分のカードから支払う。
「後、食料とか色々ほしいものがあんだけど」「こりゃ、上客様だな。何が欲しいんだい?うちで揃うモノなら何でも出すぜ。違法なもん以外は大体揃えてあるつもりだ」
リストをフランに渡しながら、溶ける様な笑顔で茶までいれてきたヤン。
「おいおい、本当俺んときとはえらい違いだな……」
「毎回値切ってるお前と、言い値ですんなり払ってくれるこのフラン様だっけかを一緒にすんじゃねぇ。なんでこんなお方がお前のクルーなんだよ、お前が下僕にしてもらえ」
うるせぇとつかみ合うモブとヤンを見ながら、フランが思わず声を出して笑った。
「仲がいいんだな」「「ちげーよ」」
フランが辺りを見渡すと、ジャンクコーナーに鬼瓦の様な形状の板を見つけ。
「これは?」と指をさしてヤンに尋ねるが、「ジャンクで拾って来たもんだけど、何か判らなくてそのまま掃除だけして置いてあるやつだな安くしとくぜ?」
「拾ってきただけなのに随分たけぇな」「うるせぇ」
手にもって、裏表を確認し。「これ、貰えるかい?」「まいどあり~」
同じ様に、めぼしいモノを籠に突っ込んでは同じように投下していく。
「俺は、これくらいでいいよ艦長」「随分買ったな」「流石艦長のおススメの店だけあって面白いもんが沢山あったからな」
隻腕であるにも関わらず、悠々と戦利品を担いで店を出ていったフランの背中をみつめ。
「俺もかせがにゃな……」モブがそう呟いた。
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