第五話 港町リフキン
「何事もなくて良かったわ、それよりこんなに謝礼受け取っても良かったのかい?」
そういって、自身のカードを何度も見る。
「命あってのモノだねっていうだろ?」「そりゃそうなんだがよ、こんなに貰える程良い船じゃなかったしな」
二人合わせて二十万フィーをフランから受け取った艦長が何とも言えない顔で頭の後ろをかいた。
「これから世話になるんだから、宜しく代もはいってる」「それだと完全にお客様扱いにしねーとまずいぜ?」「まったく、何処までも変わった艦族だな。俺の前居たトコとはえらい違いだ」
響が、うちの艦長こんなんだから諦めて欲しいっスと溜息をついた。
「それはそうと、一応十三番ドックにうちのプレクス停泊させて。改造も頼んだわけだが、しばらくかかる。十日後に工事は終わる予定だが、もし十日以上出かける様だったら連絡頼むわ」
そういって、艦長はフランと連絡先を交換した。
「艦長はどこいくんすか?」「俺はほら、いつものトコであれ食わないと船降りた気がしねーからさ。あれを食ったら、ジャンク街を周ってくるつもりだ」「あー、あれっすか」
フランが??と首を傾げ、響は気になるならついていくと良いっすよ。
「俺が、ついていってもいいものなのか?」「ポタージュなんてお洒落なものはおいてねぇぞ」「気になるから、ついてくよ」
艦長とフランは並んで、歩きだし。響は先に宿泊場所の布団部屋せんべいに先いって部屋取っておくっスといって人ごみに消えていった。
しばらく、無言で二人ならんで歩いていくと艦長はおもむろに「ついたついた」といいフランは訝し気に正面にある店を見た。
「これは……、店なのか?」
看板も無く、ボロいプレハブの様な建物。豆腐建築みたいな殺風景、ただ艦長が確信をもって足を止めたので場所は間違いない。
「結局ここはなんの店なんだ?艦長」「マーボ鳥肉とリンゴとオーツ麦のパイの店だ」
「へぇ、かなりの穴場っぽいが」「穴場も穴場だぞ、なんせ紹介雑誌とかにものってねぇからな」
もう一度、ボロ屋の豆腐建築を二人でみて。「中はいんぞ」「あぁ」
二人が中に入ると、しわがれた爺さんが一人で鍋をかき回していた。
「いらっしゃい、なんだいモブか」「なんだいはないだろ爺さん、勝手に座るぜ」
「金はあんのかい?」「今日はな、ほら先払いだ」
カードをかざして確かに振り込まれたのを、店長の爺さんが確認した。
「おや、珍しい。ま、金があんなら今日は客だな」
「新しいクルーも一緒なんだ、早いとこ美味いの頼むよ」
そんな事をやっていて、フランの眼はどんどん細くなっていた。
「艦長モブって名前だったのか」「だっせぇ名前だろ?、まっいいや適当に爺さんが料理持ってくるまで適当に座らしてもらおうぜ」
そういってカウンター席にモブが座り、フランも隣に座った。
「そういや、艦長はなんでヴェルナーを知ってるんだ?」「これだよ」そういって、自分のシャツをめくると背中にフランと同じヴェルナーの色違いがありフランが眼を見開いた。
「成程な、俺以外の使い手は初めて見た」「父親の形見だからもってるだけだ、使い手じゃねぇって」「これのデメリットを知ってて、使おうなんて馬鹿は早々いないだろ?」
そこへ、爺さんが鳥麻婆を先に運んできた。
「アンタ、モブの船に乗る気かい?悪いことは言わねぇやめときな」「こいつらといると面白そうだったからな」「そうかい」
そういって、台所に引っ込んでいく。
「そういや、お前ヴェルナーがあってなんで腕吹っ飛ばされたんだ?」「鍵盤夜叉聖(ぎんばんやしゃひじり)を敵がもってやがったんだよ」「うわぁ、良く動くものがあったな……」「いや、中途半端にしか動かないものでそれを使った敵も一緒に吹っ飛んだ」「だろうなぁ、腕一本で済んで儲けものぐらいか」
一口、鳥麻婆を口に運ぶと程よい辛さと鳥の油が舌を楽しませる。
「確かに名店だ、覚えとくよ」「お気に召した様でなにより」
二人でゆっくりと、麻婆の皿を平らげるまでカチャカチャと皿が鳴る音だけが響く。
空になった皿を見つめ、
「ヴァレリアス博士の技術は、別に兵器だけじゃねぇ。むしろ、あの人兵器は専門外だ」「人の生活を良くしようと腐心し、数々の恐ろしいモノを残した博士か」
「彼女も浮かばれねぇだろうよ、どいつもこいつも彼女の遺産を兵器に転用してやがる」
兵器としても、ハッタリとして使っても彼女の遺産があるというだけで。
「天才の遺産か……」「俺達艦族は、それを探すのが目的だからな。それだけで暮らせないから雑用をギルドから請け負ってるだけ、メインはあくまで遺産探しだ」
分析しても、分解しても訳が分からず。スキャナーで通して部品構造真似ても同じものが未だに作れてねぇってどんだけのもんだよって話だよな。
二人は、何とも言えない顔で笑った。
「同じものを同じ様に作っても、精度が足りずに我々はオリジナルを越えたって吹聴して盛大に吹っ飛んだアホみたいな星があっただろ?人間なんてそんなもんだ」
「ティアドロップか、どんなものなんだろうな」「想いで、困難を断ち切る剣の正体がヴェルナーって事を考えるともっとヤバいもんだろうなぁ」
二人で、食後のドリンクを頼んで楽しみながらそんな会話をしていた。
「この後、俺はジャンク街いくけど」「御供するよ、艦長」
フランがにこっと笑って、モブが一瞬目を奪われる。
「どうしたよ?」「なんでもねぇ」
(こいつ、本当顔が人形みたいでやりにくいな)
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