第四話 貧乏はつらいよ
「んで、響。食料と水の残量はどの位あんだ?」「カツカツに決まってるじゃなっスか、次は回り道するだけの燃料も水も食料も無いっすよ」
特に、この船元々三人乗れる船じゃねぇっスから。
酸素の減りが、想定より速いっスと苦笑した。
「あぁ、そういやそうだった。フランがついてくる気なら、増設しにゃならんな」
「うちに増設する金なんてあるんすか?」「武器をいい加減つけようと思って、節約に節約を重ねて今約四万フィーある」「貯めたっスね~、でも四万フィーじゃ増設したらまた一からになるっスよ」
「わかってるよったく……、ジャンプ以外は今時デビュー仕立ての艦族だってこんなののらねぇよって位の代物だからな」
そこへ、フランが入ってくる。
「すまない、俺を助けたばっかりに」「気にすんな、それより血は止まったかい?」
「あぁ、おたくの船はえらいちぐはぐだな。殆どの設備が最低限なのに、医療ポッドや酸素や装甲はグレードに対して高いモノを積んでる」
「弱小はしぶとくがモットー何でね、命かかってるとこはそれなりには投資してんのさ」「本当変わった艦族だな、俺は嫌いじゃないが」にこっとフランが笑う。
「それはそうと、ものは相談なんだが。俺もしばらくこの船に厄介になってもいいかい?、勿論増設費用分は俺が出す、その位の分別や仁義は持ち合わせてるつもりだ」
「あん?酸素や水回りなんかに加えて、それ動かすジェネレーターなんかも増やさなきゃいけねぇーからどうやって費用減らそうか考えてたんだが」
「それは、任せてくれ。こう見えても、それなりに金は持ってるんだ。港についたら謝礼も出すよ」
「お前、なんであんな辺鄙なとこで遭難してたんだよ?」
「アンタも艦族なら判るだろ?仕事中に船ぶっ壊されたんだよ」
「うわぁ……」「間一髪、脱出ポッドに飛び乗ってライセンスと電子カードだけはもってこれたから金はあるが船も行く当てもねぇと来たもんだ。オタクらは前居たとこと随分違って楽しそうだし、ご一緒させてもらえないかと思ってね」
「響、おめーが決めろ」「何で俺っスか?」「俺はどっちでもいいからな、後はおめーがうんと言えば話は終わりだろうが」「それ、断れねーやつっス」
「あはは、本当面白いなお前ら」「所であんた、ポジションは?」「一応戦闘員だが、この船で戦闘は無さそうだからどんな仕事ならある?」「見ての通りボロ船なんで、雑用しかねぇよ」「そうか、判った」
首にならないように、頑張らないとなとフランが笑い。
いやなら降りてくれていいぜ?どうせ、ロクな稼ぎも無い当てもない艦族とは名ばかりのその日暮らしだし。引き留めるなんて、それだけで赤っ恥だろ?
「ポタージュ美味かったよ、ありがとう」「どうせ、インスタントだ。誰が作っても一緒さ」「艦長には判んねぇかもしれないが、戦闘員で同僚っていうとロクなの居なくてな」「それは、流石に判るぜ。しかも、アンタかなりの美形だからな」「戦闘員で美形で傷が腕一本だけって事は、超弱くて逃げまくってたか。クソ程強くて単純に傷さえつけられるような奴が居ないって事だからな」
「気になるかい?」「そりゃ、これから同僚になろうって奴の事だからな」
「俺の場合はこれだよ……」
ちらりとフランがマントの下に、懐中電灯の様なものを腰に下げてるのが見え。
それに気が付いた、艦長が眼を見開く。
「おぃ、そりゃヴェルナーじゃねぇか」「あぁ、流石にジャンプなんてもん使ってるだけあってこれも知ってるか」
さっぱり判らない響が、艦長とフランの腰の懐中電灯みたいな何かをきょろきょろといったりきたりする。
「俺は、壊れた奴しか見たことがねぇんすが」「響はしらねぇか、ヴァレリアス博士の残した試作品の中でも特級にやべぇしろもんさ。ある意味、この宇宙にあるどんな武器よりも」
但しデメリットが強烈で、誰も使いたがらず。ちゃんと稼働できるのを俺が見たのはそいつで二本目だ。
「よく、それを使おうって気になるな。信じられねぇ」
「ねぇ、艦長。その強烈なデメリットってなんすか?」
使えばすぐ判る、すぐにな……。
「それは、極力使うなよ。次の港で、何か適当なレーザーソード買ってごまかしとけ。そいつを知ってるのは艦族でもそうはいないだろうが、動くヴェルナーがあるなんて知られたら欲しがる奴はごまんといるだろうよ」
「判ってる、俺の母は私を守る時にこれを使って何も残らなかったのを目の前で見てるから」「なおの事、今もそれを使ってるおめーの神経が信じられねぇよ……」
「墓に何にも入れられなかったから、母の形見はこれしかないんだよ」
「それなら余計に使わず、毎日磨いてしまっとけ」
ゆっくり、フランが頷いた。
「あぁ、新しい艦長がそういうなら」
「星が見えてきたっすよ」「さて、今度はクソみたいな高い税金じゃないと助かるんだが」
エメラルドグリーンに輝く星、その港はもうすぐだ。
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