第24話


「⋯⋯そ、それでレイ、どこに行くの?」


「ん?別にどこにも行かねえよ、ドスカータ公爵家が治める街がどこか分かるか?」


「な、何故街の場所を聞きたいの?」


「そりゃ後での楽しみにしとけ」



 全然楽しみじゃない、なんならこのまま帰らせて欲しいとサシャは本気で願った。 まさか自分が惚れかけたイケメンがこんなヤバい奴だったとは⋯⋯



「ふむふむ、ここから北西に30kmくらいか⋯⋯よし────」


「っ!?!?」



 ドスカータ公爵家が治める街を特定したレイは、突如体から大量の魔力を放出する。サシャは再び恐怖した、接近戦においては最強だと思っていた。だが魔力量も尋常ではなかった、サシャが現役時代に仲間を失いつつも何とか倒したリッチ並かそれ以上⋯⋯。



「そろそろ使えるのバラしてもいい頃だと思ってな、街の方角よく見とけよ〜⋯⋯《土系統魔術・天蓋降星》」


「街の方角って⋯⋯っ!!!」



 30km先の天空に突如巨大な岩が現れた、30kmも離れているのに目視出来るほど巨大な岩が⋯⋯ゆっくり落ちていくように見える。



「まぁ文字通り隕石を街に落とした、これでガンダルフさんも後悔すんだろ。 サシャには俺がこのくらい『魔術』が使える事を見せた方がいいと思ってな、黙ってても広めてもどっちでもいいけど⋯⋯次からはもっと全力で止めた方がいいかもな」


「ま、魔術って?魔法じゃないの??⋯⋯隕石を落とせるなんて、貴方何者なの!?」


「⋯⋯本当に俺の事知りたいか?」



 言外に聞くなと言われている、そう目が語っている。サシャは大人しく口を閉じた、ただ恐怖は収まらず震えが一向に収まらない。



「じゃ、俺はこのままコンタリアへ向かうわ。もう二度と会わないと思うけど、さいなら」



 レイは別れの挨拶を言うとサシャの返事も聞かずに歩き出した。



 この日、クースプト内でも圧倒的な権力を持つドスカータ公爵家が治める領地が半壊した。




 ◆◆◆




 スークプトの首都を出たレイは森の中を走り抜けていた。



(ん?後ろに人の反応?俺のスピードについてこれるって相当な⋯⋯この気配どこかで)



 無視して進もうと考えたがなんとなくペースを緩めた。



「おーい、レイーー!」


「お前は確か⋯⋯」



 どこかで会った記憶のある気配だと思ったら、手練の暗殺者集団のボスだった。



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ⋯⋯は、早すぎるぜ全く。ふぅーー」


「あんたか、俺を殺しに来たのか?」


「そんな訳あるかよ!⋯⋯俺達はガンダルフ様との契約を切ったんだ」


(⋯⋯こいつらの雇い主ってガンダルフだったのか、てっきり宰相だと思ってたのに)


「あの人はレイへの対応を間違えた、それで付き合いきれなくなった訳だが⋯⋯まさかあれほどの奴だったとはな。今更だが俺の名前はシュヴァルツだ、改めてよろしくな」


「超かっけー名前じゃん、羨ましいぜ。⋯⋯で、俺に何の用だ?」


「あー、もう少しだけ待ってくれ⋯⋯⋯おーきたきた」



 また人の気配が五人ほど近づいてきている、その家一人は屋敷を案内してくれた執事だった。 もちろん駆け付けた五人も息切れが半端ない状態である。



「この五人は俺の直属の部下、つまりは幹部になる。これからはレイ、あんたと契約したい」

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