第20話
「夜分遅くにすみませーん、開けてくれますかーー?」
場所は貴族街にある屋敷、レイは門の前で大声で呼びかける。 すると中から執事が出てきた、相当な手練であり暗器も服のあちこちに仕込んでいる。
「ここのボスに用がありましてね〜? 通してくれるよな?? あんたなら実力差は分かるはずだ」
「⋯⋯付いてこい」
ここが自分達のアジトであること、レイの実力が桁外れなことを一瞬で理解し大人しく案内することにした執事。
「はぁ〜、やっぱり連れてきちまったか⋯⋯とんでもねぇ気配がこの屋敷に近づいて来るからって、お前たしかレイだよな?なんか顔違くね??」
「あっ⋯⋯すまんすまん」
変装のマジックアイテムを外していなかったレイ、慣れて居ないせいもあるが恥ずかしくなってしまった。
「で、俺がここに来た理由だが⋯⋯今さっきあんたらと同業の奴らを始末してな、この街一番のところに来たって訳よ。単刀直入に聞くけど、お前らのところにも依頼来たか?」
「騒動の原因はやっぱりお前か⋯⋯依頼は来たさ、貴族とはいえただの嫉妬で人を殺したとなればメンツに関わる。ま、お前を殺せる気はしないけどな」
「そうか、じゃあ逆に依頼する。その貴族令息を殺して欲しい、報酬は情報提供だ」
ボスは一瞬目を見開いたが、直ぐに目を細めてレイを鋭く睨みつける。 手練の暗殺者達を束ねるだけあって、貫禄するある。
「貴族に手を出すに見合う情報なんだろうな?」
「それは約束する。これは答えられたらでいいんだが、お前達は国のお偉いさんと繋がってるのか?」
今度はレイがボスを睨みつける、別に睨む必要は無かったのだが⋯⋯相手の雰囲気に合わせて格好つけただけである。ただレイが睨むだけで室内の空気が一気に重くなる、相手からしたら溜まったものでは無い。
「⋯⋯黙秘させてもらう」
「それで充分だ、もし繋がっているなら尚更情報の価値が上がるからな。で、俺の依頼は受けるか?」
「情報を聞いてからでも構わないか?」
「あー、まあいいか。バックレたらここも潰せば良いだけだしな⋯⋯もう少しで禁忌の森が落ち着く、そうすればコンタリア王国から裏工作を真っ先に受けるのはこの国だろ?これが情報だ」
「っ!?⋯⋯それは、本当なのか?」
「あぁ、既に少しづつだが落ち着いてきてるって聞いたぜ?つまりこれからは人間同士の領土争いが始まるってことだ」
(こいつらが王様か宰相辺りと繋がってんのは分かった、ならこの国の掃除は要らねえだろうし教えても問題ない。それにこの国を守るのも面倒になっちまったしな)
しばらく沈黙が続く、ボスは目を瞑り高速で考えを巡らせていた。 レイが言った情報は正しいのか、ただ禁忌の森の情報は久しく調べていなかった⋯⋯
「禁忌の森を調べてから依頼を遂行するのでも構わないか?」
「あぁ、構わねーよ。てか嫉妬で人殺しちゃうような貴族とか、国にとって害でしかならねーから依頼関係なく殺しとくのを勧めるぜ」
そのままレイは席を立ち部屋の外に出た、その後も沈黙は続き唯ならぬ気配が屋敷から遠ざかった時。
「⋯⋯⋯はぁ〜〜、ありゃバケモンだわ」
「ボスの賢明な判断に感謝します、我々も今日潰されてもおかしくなかったですから」
ボスと執事は揃って安堵の息を吐いた、レイはノリで睨んだだけだが二人にしてみれば死神の鎌を首に当てられているに等しい。
「早急に禁忌の森を調べてくれ、俺は上へ報告に行ってくる」
「承知しました⋯⋯彼のことも報告されるのですか?」
「お前は反対か。いや、俺もしない方がいいとは思うんだが⋯⋯レイについては伏せる」
「またまた安堵しました、今日だけで数年は寿命が縮みましたな」
「全くだ」
二週間後、昨日の夜宿の部屋に一枚の紙切れが置いてあった。『依頼完了』とだけ書かれてあった、つまり禁忌の森の調査も終え情報の正当性が取れたということだろう。
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