第19話
『おい、レイ、起きろ!!』
「ぶへっ、なんだ白虎か⋯⋯おはよ〜」
『おはよ〜ではない!敵の本拠地を突き止めて帰ってみれば、気持ちよさそうな顔して寝ているとは』
「すまんて、お前に任せたら安心感で寝ちまったんだよ⋯⋯ほら、これ食わしてやるから許せ」
そう言ってマジックバッグの中から屋台で買った串焼きを10本渡すと、白虎は貪るように食べた。
『うむ、うむ!美味いではないか!!また食いたいぞ』
「⋯⋯⋯食い終わったな、じゃあまた呼ぶから」
白虎は音も立てずに霧の如く空気に浸透するように消えていった。
今日は依頼を受けずに街を散策することに決めたレイ、宿を出て一人ブラブラと歩き出す。 大通りに入ると沢山の美味しそうな匂いが鼻を刺激する、宿の朝食を取っていないレイは目に入ったものを片っ端から買っていき、腹の中に入れていく。
「うん、美味いな。醤油があるだけでこんなに味にバリエーションが増える、改札してくれた同郷人に感謝だぜ」
(そして当然の如く尾行されてる訳だが、もう今夜潰すしどうでも良くなるよな〜⋯⋯吹き矢が飛んできたらキレるけど)
心の中での呟きがフラグになる事もなく、屋台で様々な食べ物を楽しんだレイは不意に立ち止まった。
「目に入ると気になっちゃうよな、魔道具屋⋯⋯おぉ、なんか凝ってる品が多いな!」
「いらっしゃい、ここは辺鄙な物しか置いてねえけど要望とかあるのか?」
「いや、特には無い。最近マジックアイテムにハマりだしてな、集めようと思ってるんだ」
「そりゃ随分金のかかる趣味だな、こちらとしては有難いけどな」
こじんまりとした店内は商品の配置にこだわっているのか、内装も含めてレイの男心をくすぐった。
(これって、水道の蛇口にそっくりだな。効果は⋯⋯温水も出るのか、正にって感じじゃん)
「そりゃ随分前に売られてた奴を取り寄せたのよ、魔法が使えるやつにとっては要らねえ物だけどな」
「俺はこういうのいいと思うぜ、小さいことだが生活が便利になるのは間違いないしな」
しばらく店内を回っていると、不思議な仮面を見つけた。
(これは⋯⋯変装出来るアイテムか?ただの仮面ってことは無いだろうし)
「お、そいつに目をつけたか。かなりの代物だぜ? 仮面を付ければ顔を変えられるのはもちろん、背丈だって自由に調整出来る」
「まじ?変装するのにはピッタリじゃねえかよ、これいくらだ?」
「へへ、30万リルだな「買おう」⋯⋯即決かよ、こういう時は値引きするもんだ。25万リルでいい」
面白いマジックアイテムも買えて満足したレイは、今夜の襲撃に向けて早めに宿に戻り仮眠を取った。
◆◆◆
日が完全に沈み、街も静かになった頃。
《妖魔術・妖狐、天狗》
『レイはん久しゅうございます、白虎から聞いとりますがその件ですかい?』
『うむ、気持ちよく寝ていたのだがな⋯』
この二体の説明は不要だろう。妖狐は尾が9本あっておっとりした美人で狐と人間のハーフみたいな見た目をしている、天狗は⋯⋯寝そべって腹をかきながら出てきた。
「今から敵の拠点を潰す、ボス以外は皆殺しで構わない。そしてボスは俺の前に連れてきてくれ」
『了解でありんす、楽しみですね〜〜』
『ふん、暴れられるのなら文句はない』
白虎と違い妖狐と天狗は殺傷を好む個体な為呼んだ、やりすぎないか多少の不安はあるが。
「じゃあ早速言ってくれ、この後も予定があるんだ」
少し経って流れた噂に、スラム街で奇声や笑い声を上げながら暗殺者の本拠地を蹂躙した2人がいたとかなんとか⋯⋯
30分後、妖狐と天狗の間に挟まれた状態で連れてこられた男は、顔を真っ青に染めながら全身をガクブルと震わせていた。 因みにレイは昼間に買った変装のマジックアイテムを付けている。
「おい、早めに済ませたい。お前達を雇ったのは誰だ?」
「⋯⋯この国の貴族令息です、あの受付嬢に一目惚れしていた所にレイって奴が出て来たので頭に来たようです」
拷問するまでも無くペラペラ喋る男、どうやら30分の間にしっかり調教も済ませたみたいだ。優秀な妖怪達である。
「それじゃこの街で一番の暗殺者集団の名前と場所は?」
「名前は知りませんが、場所なら分かります。希望は我々と同じくらいですが、とにかく手練が多いので⋯⋯」
「OK、ご苦労さん⋯⋯妖狐と天狗もありがとな、はいこれ串焼き」
『おぉ〜、レイはんは太っ腹や、有難く頂くでありんす』
『うむ、頂こう』
男の首をスパッと切り飛ばして、二体の妖怪には帰ってもらった。
「さて、街一番の腕利きが揃う暗殺者集団に会いに行きますか〜」
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