第17話


「そうだよな、これが普通の首都だよな〜」



 高い防壁に囲まれた街は首都なだけあって外にいても街の賑わいが聞こえてくる。 スークプトはこれといった特徴も無い国で、強いて挙げるとすれば奴隷を積極的に使っている国である。 犯罪者や借金を返済出来なくなった者を奴隷にして、鉱山発掘や防壁の改築等に奴隷をあてていた。



(奴隷があるとはいえ戦争になったらコンタリアに潰されるんだろうな〜⋯⋯でもこの国は民に圧政を敷いてる訳でもないと、クソ悩むな)



 門の警備兵に冒険者カードを見せて街に入ると、ベルカーサと同じ程の活気が出ていた。 その光景を見ただけでレイは、愚王では無いと判断した。



(うーん、やっぱこの国はコンタリアに吸収されんのは勿体ないかな〜。そもそも攻めてくるか分からんけど、十中八九欲かいて攻めてくるし⋯⋯戦争が起きたらスークプト側として出るかな)



「っと、ここが冒険者ギルドか」



 ギルドはベルカーサに比べて清潔な印象、チラッと冒険者を見渡す限りだと治安も良さそうだと思えた。



「ベルカーサから来たレイだ、手続きを頼む」


「まぁ、イケメンさんいらっしゃい。ベルカーサから?やっぱり寿司は食べたのかしら、一度でいいから食べてみたいわね〜⋯⋯あら、その歳でこのランクなの?将来有望じゃない、お姉さんが狙っちゃおっかな」



 見た目は20代後半くらいの妖艶な雰囲気を漂わせたナイスボディ受付嬢がレイに猛アピールし始めた。ここの冒険者としては有名なのだろう、数人の冒険者が何事だと目線を向けた。それに⋯⋯



(この姉ちゃん割と強いな、ダンジョンボスのオーガをソロで倒せるくらいだろう。そんな強い奴が俺にこんな事を言うってことは⋯⋯)


「どうやら気を遣わせたみてぇだな、感謝する」


「へぇ、洞察力もあるのね。本気で狙いたくなってきちゃったな〜」


「もう分かったから、とりあえずカード返してくれ。あとこの街一番の宿も教えて欲しい」



 本気なのか冗談なのか分からない口調でレイを口説き続ける受付嬢に、若干呆れながらも宿の聞き取りは欠かさない。ただ、レイは元々沸点が低い方である⋯⋯。



「あらあら、女性に対して矢継ぎ早に質問するのは良くないわよ?」


「⋯⋯なぁ、姉ちゃん。俺は冒険者としてギルドの受付嬢であるあんたに質問してるんだ、しっかり仕事しろや」


「っ⋯⋯申し訳ございません」



 レイは受付嬢にだけ圧をかけた、ただ妖艶受付嬢が普段と違う態度に驚き周囲の受付嬢達や冒険者達も驚いていた。



「あぁ、これから気をつけてくれればいいよ。宿は違うやつに聞くからもう行くわ」



 イライラMAXのレイは顔の鋭さを増した顔つきでギルドを出て行った。



「⋯⋯とんでもないのが来たわね」


「サシャさん、大丈夫ですか?いつもと様子が違いましたけど⋯⋯」


「えぇ、なんでもないわ。大丈夫よ!」



 後輩に元気よく答えつつも考えを巡らす。(あれは人の皮を被ったバケモノだわ、ギルドマスターへの報告は⋯⋯とりあえずは保留として、独自に調べる必要があるわね)


 サシャはソロで星五まで上り詰めた元冒険者、相当な弓使いでかなり名も知れていた。 だからこそレイに睨まれ背筋が凍った時、彼は自分より遥かに強いのだと本能が理解した。


「見誤ったわ⋯⋯謝罪した方が賢明ね」




 ◆◆◆




 レイはストレス発散の為、依頼関係なく街の外で魔物を殴り殺していた。



「⋯⋯ふぅ、スッキリした〜!死体はそのままでいいや」



 素材を持ち帰ったりもせずそのまま街へと戻ってきたレイ、するとそこへ一人の女性が話しかけてきた。



「レイさん!」


「ん?あんた誰⋯⋯もしかしてさっきの受付嬢か?」



 妖艶な雰囲気が一切無くなり、化粧も薄くなった清楚なお姉さんになっていた受付嬢。 見た目では分からなかったが、内に宿す強者のオーラはギルドで見た時と変わってなかったからレイは気づけた。



「やはり分かりましたか⋯⋯私はサシャと申します、先程は本当に申し訳ありませんでした」


「あーうん、外でストレス発散してきたから気にすんな⋯⋯ところでさっきのお前と今のお前はどっちが素なんだ?」


「その中間が素の私ですね、今は本気で謝らないと後々不味いことになると思ってここで待ってましたので」


「なるほどな、とりあえず宿のロビーに行こうぜ?少し話したいし」



 レイは自分が泊まっている宿のロビーに併設されているカフェへサシャを誘った。



「へぇ〜、ソロで星五までいったのか。通りで強いと思ったぜ」


「レイさんは比べるのもおこがましいくらい強いですよね?」


「⋯⋯やっぱりバレちゃうよな、まぁ隠したい訳でもないし良いけど」


「さっきは本当に肝を冷やしましたよ、完全にやらかしたと思いました」



 話してる内にレイは本当に気にしてないことが分かり、最初の緊張感がだいぶ薄れてきたサシャ。 その様子を見てレイは切り込んだ。



「なぁ、サシャが良いなら抱かせてくれないか? ハッキリ言えば結構タイプなんだよ」


「っ⋯⋯ふふふ、レイさんは清楚な方が好みなのですね」



 そう返事をして静かに頷いたサシャを見て、自分の部屋へ招いた。

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