第15話
マジックアイテムを買ってから三日、懐がだいぶ寒くなったレイは連日海に潜り魔物を狩りまくった。 マジックバッグを購入したこともあって討伐照明の数も格段に増え、報酬もたんまり貰える様になった。
未だにダンジョンに挑む冒険者が多いものの、レイが魔物を狩りまくっている影響なのか⋯⋯海の魔物が暴乱すると言った事は起こっていない。
「でさ〜ベックよー、最近数人に付けられてるんだが殺していいか?」
「出来れば我慢して欲しいですが、難しいですよね」
「おう、無理だな。明日にはこの国出ていくからそこまで付いてくるなら問答無用で殺す」
ベックが持つ商会へとやってきたレイはここ数日の悩みの種を報告していた。良質のマジックアイテムを買った影響か、冒険者達に目をつけられるようになっていた。
「中にはこの街出身の冒険者もいるでしょうから、我々でそれとなく止めてみます」
「そこはどうでもいいけど、近いうちに人の死体が出るだろうから事前に言っただけだしな」
別にベックと友人になった訳でもないため、止めて欲しいと言われても聞く義理は無い。自分に敵意を向けるなら問答無用で殺す、それはレイがこの世界に来てから決めていたことだった。ただクルト達3人は当時実力の差が圧倒的だった為、特殊な対処をしたに過ぎない。
「それとギルドマスターがレイさんをお呼びなので、街を出る前にギルドへ立ち寄ってください」
「⋯⋯やっぱりギルドマスターも『そっち側』だったか」
レイの呟きに返答はせず苦笑いを浮かべて答えるベック、レイの予想通り首都のギルドマスターも諜報機関に所属していた。
◆◆◆
「初めましてだなレイ、俺がこのベルカーサのギルドマスターを務めるユーカルトだ」
「どうもっす」
ベックと別れてから用事は早めに済まそうと、そのままギルドにやってきたレイ。 受付嬢を通して執務室へ通された。 ユーカルトは元冒険者なのだろう、鍛え上げられた肉体から放たれるオーラから強者であることが分かる。
「さて、早速本題なんだがレイを星四へ昇格させたい、構わないか?」
「⋯⋯結構いきなりっすね、まだ星四になれるほど依頼こなしてないと思ってたけど」
「依頼の面ではそうだな、だがダンジョンへ冒険者が大量に流れた時も地道に海に潜ってくれただろ? ギルド職員としては貢献度?も評価の基準に入るのさ」
(いや、別に俺はそういう理由でダンジョン入らなかった訳じゃ無いけどな。ただ攻略するならもっと大きなダンジョンが良いってだけで⋯⋯)
「ベックから聞いたがマジックアイテムに興味あるんだろ? たまにだがダンジョンからも手に入ることあるのに不思議な奴だな」
「っ!?!?」
レイは思わず口をあんぐりと開けて言葉が出なかった、まさかダンジョンからもマジックアイテムが出るとは微塵も思わなかったのだ。
「あー、初耳だったみたいだな⋯⋯なんかすまんな」
「いや、別に⋯⋯ユーカルトさんが悪い訳じゃないんでっ!!」
「⋯⋯そんな悔しそうに言われてもって感じだが、まあこれからも沢山機会はあるんだからそこまでショック受ける必要ないだろ」
「〜〜!!⋯⋯ふぅーー、そうっすね」
いや、マジックアイテムへの執着凄すぎだろとユーカルトは思った。怒り、悲しみ、悔しさ、この数分で面白いくらいにレイの色んな表情が見て取れた。
「それにしてももうこの街を出ちまうんだろ? ギルドマスターとしてはもう少しいて欲しいって気持ちは無くはないけどな!」
「その辺の事情はベックから聞いてるんすよね? そろそろ俺も動き出さないとなんで」
「一応言ってみただけだ。あーあと最近つけられてるんだって? 別に構わないが街道に死体そのままにしていくなよ?」
「それは問題ないっすよ、いつも森の中を走って移動してるんで」
「⋯⋯移動の時点で規格外な奴だな」
その時、執務室の扉がノックされた。
「ギルドマスター、レイさんの昇格手続きが完了しましたのでカードをお持ちしました」
「おう、持ってきてくれ」
「それにしても登録してから一ヶ月経たずにもう星四か⋯⋯間違いなく史上最速だな」
「あざっす」
史上最速と言ってもレイからしたら本望では無い、星三へ昇格した時も星五の冒険者ラルクが勝手にギルドマスターへ口添えをしたのが理由でもある。
「じゃあまたこの街に来てくれよな、いつでも歓迎するぜ」
「この街は快適ですからね、寿司も美味いし。また来ますよ」
その翌日、レイはベルカーサを出て次の目的地スークプトへ向けて出発した。
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