第14話
「本当にここか?」
翌日、早速ギルドの受付嬢に教えてもらった場所に来ると、思わず疑念が浮かんだ。
錬金術師の家なのに煙突から煙が立ち上っており、金属の匂いもかなりする。錬金術師ではなく鍛冶師では?とレイはハテナを頭上に作りつつも扉を開けた。
「おう、どうした坊主。⋯⋯お前冒険者か?手練の割に装備付けてねぇが」
「あー、マジックアイテムを買うならここって言われて⋯⋯フィーネさんに用があって来たんだけど」
「女房なら上にいるぞ。ウチはマジックアイテム屋と鍛冶屋が一緒になってんだ、俺の名前はアーバンだ」
錬金術師に会いに来たのに筋肉ゴリゴリのおっちゃんが居て戸惑ったが、鍛冶屋もあるならここで装備を買うのもアリか?と考え直したレイ。 アーバンはレイを一目見て手練と気づいたことで、かなり腕のいい鍛冶師だと伺える。
「それならここで装備も買っていくか、いい加減揃えたいなと思ってたし」
「そりゃこっちとしてはありがてぇが、ウチは結構高めだぜ?」
「それは心配いらん、こう見えて結構稼いでるんでな」
依頼を淡々とこなしていながら、特に散財癖などが無いレイはかなりお金を溜め込んでいた。
「と言っても坊主は剣とか必要ないだろ?⋯⋯その身体を見ると防具も付けない方がいいだろ」
「そう言われると確かにそうなんだが⋯⋯じゃあ質のいい解体用のナイフと短刀を見せてくれ」
レイも考えてみれば防具とか要らない事に気づいて少し気まずい空気が流れるが、買うと言った手前ちゃんとこの店にお金を落とす。
「⋯⋯⋯これが解体用のナイフで、こっちが短刀なんだが少し特殊な奴だ。この短刀は二本でセットなんでな、つまり二刀流ってことよ」
「うわ、どっちも切れ味凄そうだな⋯⋯しかも短刀の二刀流とかカッコイイじゃん、どっちも買うぜ!」
「思い切りがいいな! 合計で30万リルだ」
きっちりお代を払ったレイはそのまま上のマジックアイテム屋へ階段を上がる。
「下から随分楽しそうな声が聞こえると思ったら、見ない顔だね〜。アーバンが初見の奴に心を開くとは大物さね」
「あんたがフィーネさんか。てかあれで心開いてるのか?俺から見れば普通に見えたけどな」
二階に上がると様々なマジックアイテムが置いてあり、その奥に女性がだるそうに座っていた。
「まぁそんな事はいいさ、マジックアイテムを買いに来たんだろう?」
「あぁ、マジックバッグと野営が楽になる道具とかあればそれも欲しいな」
レイの要望を聞くとフィーネは黙って店の奥へと消えた、少しすると指輪や手首にはめるリング数個と、手のひらサイズのテントの模型図?のような物を持ってきた。
「ウチに置いてあるので良い奴はここらだね。まずマジックバッグは指に嵌めるタイプと手首に付けるタイプがある、更に効果は時間遅延も施してあるよ。 そしてこれが自慢のマジックテントさ、あんたの魔力を登録すればあんたしか使えなくなるし広さも充分、最大で五人程が寝れる。つまり認証付き拡張型のマジックテントさね」
「す、すげーー!!どれも便利且つ持ち運びも不便じゃないし効果も凄い! あんた本当に凄腕なんだな!!」
「あははは、そこまで褒めてもらえると嬉しくなるもんだね〜。でも初見のお客さんにオマケはしないよ??」
「はっ、心配すんな!負けて欲しくてほめたんじゃねーよ」
あまりに良質で効果の良いマジックアイテムに思わず興奮しただけで、値段を下げようなど微塵も考えていなかった。
「ただ俺は魔物狩るとき殴ったりするから、バッグは手首にはめるやつにする。あとマジックテントも売ってくれ」
「はいよ、二つで55万リルさね」
「っ!?俺の所持金がほぼ消える⋯⋯」
「あはははは!そりゃウチは良いマジックアイテムしか売ってないからね〜。やめとくかい??」
「いいや!買うに決まってる!!」
最後は挑発された感が否めないがいい買い物だったとレイは思った。
(それに金はまた稼げば良いだけだしな)
「じゃ、ありがとな〜」
「またいらっしゃいな」
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