第13話


 ベックとの話は続いていたが、禁忌の森に関しては急を要する為マジックアイテムで部下へ任務を言い渡していたベック。 それを見てレイは厨二心をくすぐられていた。



「レイさんはいつまでこの街にいるのですか?」


「あと一週間くらいはいるよ、水中戦闘も経験しておきたいしな⋯⋯あぁ、とりあえずはウォスカトスから北に行くつもりだ。スークプトにどれくらい居るか分からんが、コンタリアに暫く滞在するつもりだ」


「っ⋯⋯そう、ですか」


「ん?あー、コンタリア王国の兵として戦争に出るつもりは全くないから安心しろ。むしろ削らないとだし」


「削る?何を⋯⋯ってレイさんまさか!?」



 それ以上は言いたくないのだろう、レイは口の前で人差し指を立てた。 ベックは静かに頷き落ち着きを取り戻した。



「ふぅ、レイさんが何故そんな事をするのかは聞きません。我々としてはレイさんが敵に回らないだけで幸運だと思いますので」


「大袈裟なやつだな」



 その後はベックからウォスカトスだけでなく、色んな国の事情を教えてもらった。事情と言っても主には人物像、コンタリア王国の王は賢王なのか?等を色々聞きまくった。 気づけば日は傾いて淡いオレンジ色になっていた。



「色々聞けて助かったよ、この街出る時また声かけるから」


「えぇ、ありがとうございます。ダンジョンが発表された関係で暫くは海に人が居なくなるでしょうから、思う存分依頼をこなしてください」




 ◆◆◆




 翌朝、レイは冒険者ギルドに来ていた。


「え、じゃあこれを首に

 かけるだけで水中で呼吸が出来んの?」


「はい、ウォスカトスが独自開発したマジックアイテムになります。なんと言っても大陸一の港がある首都ですから」


「それを無料で貸出すギルドも太っ腹だな」




(ほんとに呼吸できてるじゃん、どういう原理なんだろうな。ベックに見せてもらった時からだけど、マジックアイテムへの興味が湧いてきたな。⋯⋯趣味で集めてみるか?便利な道具も多いだろうし)



 それとギルドの受付嬢が予測していた通り、海には冒険者の数はほぼ居なかった。発見されたばかりの未開拓のダンジョン、冒険者の心を踊らせないわけが無い。



「まあその分俺が暴れられるんだけどな」



《雷系統魔術・雷光散撃》



 周囲に人の気配を居ないことを確認したレイは、自分に群がっていた魔物たちを雷の魔術で駆逐した。



(あ、これだけ討伐しても持って帰れねぇじゃん。マジックバッグとか売ってないかな〜、帰りがけ見てみっか!⋯⋯ん?あれはなんだ?)



 遠くから物凄い勢いでレイに突っ込んでくる魔物、メタルシャーク。名前の通り非常に固く泳ぐスピードも桁違いに速いことから名付けられた。



(ありゃ《放電》じゃダメージ入らねぇな。⋯⋯ちっ、めんどくせぇ)


「すーーー、ふーーー⋯⋯《上級魔術・火雷神》」



 両手を体の前で合わせて魔力を圧縮し、雷へ性質変化させる。充分にためを作った状態で手から音を置き去りにした光が、雷特有のうねりを立てながらメタルシャークを貫いた。



(う〜ん、久しく使ってないからイマイチだったな。魔術を人に見せられないとはいえ衰えるのは良くねえし、なんか対策考えねえとな)



 メタルシャークや他の魔物たちの亡骸を回収せずに陸へ向けて戻った。




「レイさんですね、海中はどうでしたか? 今はダンジョンへ冒険者が集中しているので、何か異常があったりすると大変なのですが⋯⋯」



 冒険者ギルドに戻って来たレイは、受付嬢に懸念を言われた時に、メタルシャークの存在を思い出した。 ただ討伐はしているし少しすれば冒険者も海に戻ってくると予想していたレイは、特に報告の必要性を感じなかった。



「特に異常は無かったぞ、ダンジョンも大きい訳じゃないしその内落ち着くだろ」


「そうですが⋯⋯」


「まあ俺は暫く海に入るつもりだから、何かあったら報告するよ⋯⋯それと聞きたいんだが、この街一番の錬金術師の店知ってるか? マジックアイテムを買いたくてな」


「錬金術師ですか⋯⋯お店を出してる方で一番となると、フィーネさんの所ですかね。偏屈な方ですが腕は確かですよ」


「錬金術師のフィーネか、OKありがとう!」



 レイは今すぐにでも店に行きたかったが、じっくり見るために明日へ持ち越すことにした。

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