第11話
「⋯⋯はい? ではレイさんはダンジョンを見つけただけでなく我ら諜報員を同行させたと?」
ベックは商会が持つお店の地下で部下の報告を聞いていたが、思わず聞き返してしまうほど衝撃を受けていた。
「はい、我々の尾行にも初めから気づいていた様です。それからベックさんが上の立場である事も気づかれてました⋯⋯」
「⋯⋯それで消そうとしたけど、止められたということですね?」
「ターゲットは我々裏の人間に寛容でした、むしろ賛成派とも言っていました⋯⋯初めは疑いましたが、ダンジョンに同行させ情報をこちらに与えようとした事で、あの時はそうするしか手段がありませんでしたので⋯⋯」
「なるほど、確かにこちらにもメリットがありますね。それにレイさんの実力もある程度見ることが出来ると⋯⋯恐らく実力を隠しているから、その口止めとしてもダンジョンへ同行させたのでしょう。⋯恐ろしい方だ」
レイは接近戦に関しては色々バレても仕方がないと思っているため、そこまで深い考えはなく同行させたが、ベックは勝手にレイへの評価を数段上げていた。
◆◆◆
「おいっしょぉぉぉぉ!!!」
場所はダンジョン内の3階層、レイと諜報員2名はありえない速さでダンジョンを攻略していた。
「はぁ、はぁ、⋯⋯なんて速さなんだ! ベックさんが手練と言っていたとはいえ、これは既に星五位の実力があるぞ」
「⋯⋯これも報告していいのだろうが、なるべく広めて欲しくないのだろう。口止め料も含めて俺達は同行させている」
ベックと同じくヤケにレイへの評価が高い一人の調査員がいた。
「お、お前ら遅せぇよ!! 今まで厳しい修行に耐えてきた諜報員なんだろ!? ならここで限界を超えろ!!!」
何故か熱血指導が始まった。普段は影に潜み決して表に出ることの無い人間に対して⋯⋯、理解不能である。
「まずはダンジョンがどれくらい深いのかって情報が必要だろ? だからこんな急いでんのにお前らがそんなヘタレでどうするんだ!?」
「⋯⋯こちらとしては助かるが、そこまで急がなくてもだな」
「いいや!このまま進むぞ、頑張ってついてこい!!」
謎の熱血指導で謎のリーダーシップを発動させているが、この状況でレイが頼りなのは確かなので渋々ついていく2人。
「お、5階の奥に大きい扉がある。ってことは5階毎にボス部屋がある的な? ⋯⋯お前らあと少しだ、ガンバ〜」
「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ⋯⋯」」
「よし、入るぞーー」
「「っ⋯⋯」」
アホみたいに走りながら魔物を屠り続けるレイに何とかついてきた2人、必死に付いてきたのに全く休憩などせずにボス部屋の扉を勢いよく開けるレイ。 2人からすればもうただの鬼である。
「ほほぅ、5階のボスはオーガだったか⋯⋯あ、お前らは隅で休んでろ」
「っ⋯⋯あぁ、分かった」
一瞬、ようやく休めると安堵仕掛けたところで、自分達は国を護る暗部なのだと言い聞かせて、何とか冷静に返事をした。
座禅を組んでいたオーガは静かに立ち上がり、隣に置いてあるロングソードを持ち上げ構えた。
「っ!!おいおい、魔物も《身体強化》使えるんかい! 」
オーガは全身に魔力を纏いレイへと突っ込んだ、魔物が《身体強化》を使える事実に驚くも、攻撃は難なく対処する。そこからは激しい肉弾戦が繰り広げられた。
「普通オーガは5人以上のバランスの取れたパーティで倒すんだけどな」
「あぁ、あいつの接近戦の腕はかなりのものだろう。ベックさんが焦るわけだよな」
諜報員2人はレイの戦闘を見ながらも、情報の整理を行う。このダンジョンの特徴、レイの戦闘力や人間性等も。
(ちっ、こいつどんだけ体力あんだよ。いくら接近戦の実力はバレてもいいとはいえ、流石に人外並のパワー出す訳にも行かねえし⋯⋯ジリ貧になるけどあれを使うか)
間を開けていた戦闘が再開される、先程と何も変わらない様に見えるが、レイはオーガに打撃を与える度に自身の魔力を《毒》へと性質変化させオーガの体内へ流していた。次第にオーガの動きが鈍っていき、数分経つとついに膝をついた。
「隙ありーーー!!!」
良い高さにオーガの頭が来たところでレイは思いっきり蹴り上げた、するとオーガの頭は⋯⋯もげた。
「よし、終わった終わった⋯⋯次行くぞ〜」
「「っ!?!?」」
今の今まで激しい戦闘(諜報員から見て)をしていたというのに、休憩も無しに先に進もうとするレイ。
「なぁ、お前もしかしてダンジョンの法則知らないのか?」
「ダンジョンの法則?なんじゃそれ」
「⋯⋯やはりか、5階毎にボス部屋があるダンジョンは30階から50階と決まっているんだ。規模としては中くらいの大きさだな」
「⋯⋯え? じゃあ俺ボスと戦う必要なかったんじゃね?」
「俺達は法則を知っているものだと思っていたからな」
レイは開いた口が塞がらない⋯⋯それじゃあ自分がオーガと戦った意味は?敢えて力を押えて長期戦をした意味は?
「は⋯⋯⋯早く言えぇぇぇええ!!!」
ダンジョンには便利な機能が沢山ある。ボス部屋事にセーブ機能があり、20階まで攻略したなら一度地上へ出ても、21階から攻略を再開できる。 レイ達3人は転移石へ触れて地上へと戻った。
外に出ると、そこにはベックさんと数人の諜報員が待ち受けていた。
「おぅベック、大体ダンジョンの規模分かったぞ!」
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