第8話
ゴブリンを討伐してから二週間が経った。
あれから休み無しで街を出て森に入っていたレイだが、ゴブリンの繁殖力に驚いていた。 呼吸をするように現れ続けるゴブリンにイラついたレイは、ゴブリンの大虐殺を実行した。
一気にゴブリンが減りすぎて街から調査隊が派遣されるという事態にもなったが、レイは討伐証明は数体分しか出しておらず誤魔化した。
そんな中でついに出会ったオーク、案の定レイの予想した見た目はしてなかった。普通はメタボな巨体をイメージするが、3mを超えるマッチョだった。 顔はこの上なく見にくかったが⋯⋯。
(あれは、ちょっと笑ったな〜。オークが格闘術を身に付けてるとか思わないだろ、殴る時笑っちゃって一発で倒せなかったし)
あとはこの二週間で星三に昇格した。
レイは早くても1ヶ月は掛かると予想していたが、思ったより昇格が早くて違和感を感じていた。
(多分誰かがギルマスに進言したんだろうな〜、余計なことすんなよマジで。目立つのは構わないけど基本的にほっといて欲しいのにさ〜〜)
あと街を巡ったレイが気づいたことは、元にいた世界の食べ物や飲み物が普及していたこと。この街にあったのは、うどんにたこ焼き、パスタ、コーヒー等。
(ベルカーサに行けば間違いなく寿司が食えるんだろうな、魔物の肉は前世の高級肉にも負けないし魚介類も期待して良いだろう。誰がやったか知らんけど、ありがたやありがたや)
心の中で拝みながら、行きつけの喫茶店で足を組みながらコーヒーを堪能していると、3人組の冒険者がレイに近づいてきた。
「やぁ、君がレイ君だよね。僕はラルク、やっと会うことが「ギルドで割と俺の事見てなかった? 気のせいなら謝るっすけど」⋯⋯やはり気づいていたか、その件についてはすまなかったね」
「別にいいっすよ、それより座ったらどうすか。先輩ら星五なんすよね?ゴチになりまーす!!」
「⋯⋯ははは、レイ君は遠慮がないね。もちろんここは僕が奢らせてもらうよ」
初対面だろうが先輩だろうが星五だろうが、全く態度を変えないレイ。3人はそれぞれの反応をしていた。爽やかイケメンのラルクは単純に驚き、魔法使いの美女は魔力を探り、斥候の男は不快感を抱いた。
「レイ君は毎日ゴブリンを狩ってるけど恨みでもあるのかい?」
「別になにも、ただ異常に多いな〜って狩ってるだけです。繁殖力ハンパないじゃないっすかあいつら」
雑談をしばらく続けていると、不意にラルクが真面目な顔で聞いてきた。
「最近ゴブリンが急激に減った事は知ってる?」
「あぁ、なんか調査隊が派遣されたとか。妙っすよね〜」
「僕は君がやったと思ってるんだけど、違うかい?」
「俺が?そんなわけないじゃないっすか、なんでわざわざ大量に殺す必要があるんです? どうせすぐ増えるのに」
大虐殺の動機がただイラッとしただけのレイは、言い訳を織り交ぜつつ自分はそんな実力がない感じに返答する。
「⋯⋯確かに減らしたところで意味が無い、だからこそ今回の事は謎が多いんだよ」
「てかなんでそこまで気にするんです?街を納めてる人に丸投げで良いじゃないっすか」
「実は僕たち3人ともこの街出身なんだよ、それに星五ともなるとね」
「へ〜、郷土愛ってやつですか。立派ですね」
微塵も思ってなさそうな口調で褒めると、斥候の男が額に青筋を浮かべながら口を開いた。
「君は上への態度がなってないんじゃない? 気をつけた方がいいよ」
「すみません」
「っ⋯⋯」
謝った。謝りはしたが⋯⋯⋯とても改善されるとは思えない謝罪である。しかも即答、とりあえず謝っとけ感が否めない。
「ロッツォ、僕は気にしてないからいいよ」
「レイ君、私からも質問いいかな?」
「なんか尋問受けてるみてえだな⋯⋯まぁいいっすけど」
「それは確かにそうだね、ごめん⋯⋯えっとレイ君は魔力が凄く小さいけど、なにか「ねぇ、先輩方」っ⋯⋯」
レイはさっきまでより声のトーンを落として、会話を遮った。 ただ声のトーンを下げただけなのに、3人に謎の重圧がのしかかる。
「俺はこの街で何か悪さをしたんですかね? 割と真面目に依頼をこなして普通に暮らしてたつもりなんですけど。 先輩らはこの街出身となれば探りたくもなるのでしょう、その上で言っておきます。 俺はそこまで我慢できるタイプでは無い⋯⋯⋯まあ近いうちに街から出ていくんで、安心してくださいよ。その感じだと昇格が早い原因はあなた達みたいですし」
レイは残りのコーヒーを一気飲みして店を出た。
「⋯⋯ふーー、少し踏み込みすぎたね」
「ラルク、あれは早く街を出した方がいい。あまりにも劇薬だよ」
「⋯俺も同意見かな」
「まさかあそこまでとはね⋯⋯恐らくあっという間に僕達より有名な冒険者になる、ギルドマスターとの件もバレてたみたいだし次会えたら謝らないと」
「今日のことギルドマスターに報告するの?」
「うーん⋯⋯⋯⋯いや、止めておこう。直感だけど今日のことを報告したらまずい気がする」
「ラルクの勘は当たるからね、俺は従うけど流石に報告しないのは不味くないか?」
「うーん、あと数年もすれば彼はかなり有名になっていると思う。その時には星五か六まで上がっているだろうから、その時まで待とう⋯⋯」
「ラルクがそこまで警戒する程だったのね⋯⋯⋯はぁ〜あ、魔力のこと聞かなきゃ良かった。私のせいだよね」
「それは違うよ、彼は初めから僕達に余りいい印象を持ってなかった。ギルド内で見てたのもバレてたし⋯⋯魔力に関しては気になって仕方なかったんでしょ?」
「⋯⋯まぁ、そうだけど」
「俺も気にしなくていいと思う、大丈夫だって。こっちから動かなければ害はないよ」
それから3日後、レイは街から姿を消した。
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