第7話
「レイさん、もう戻ってきたのですか?もしかして失敗したとか?⋯⋯いや、怪我はして無いみたいですし」
ギルドに戻ると、心配そうにティアがレイの体をチェックしていた。
「あぁ、ちゃんと討伐したよ。森に入ったら直ぐに見つけたからな、はいこれ、借りた袋の中に耳入ってるよ」
「お預かりします⋯⋯っ! 本当に、討伐されたのですね。しかも四体も⋯⋯」
レイ達の会話に聞き耳を立てていた冒険者達は驚いた、レイがあっという間に戻ってきた為逃げたと予想していたが、あっさり討伐して帰ってきたのだ。この中の冒険者達も新人の頃に、ゴブリンで苦い経験をしていた。
それをレイはソロで四体も討伐したのだ、実力があるのは分かっていたが、ここまでとは予想していなかった。
「レイ君!凄いね!!初の依頼でゴブリン四体も討伐しちゃうなんて!しかもソロでしょ!? 将来が楽しみだな〜」
ミレイは完全にレイに目標を定め、自慢の巨乳をこれでもかと強調しながら上目遣いで会話に割って入ってきた。
ただ⋯⋯レイの反応が普通じゃなかった。
「お〜、いきなりどうした巨乳の姉ちゃん。立派な果実をそんなに弾ませたら肩こるぞ?」
「⋯⋯え?」
「ん?なんだよ」
⋯⋯⋯⋯。
ミレイは自分の武器を理解し今までも狙った異性は確実に落としてきた強者だ。ただレイには通用しなかっただけの事。
「レイ君ってデリカシー無さすぎ!!」
「おう、よく言われるぜ」
「普通目線を送るだけで巨乳なんて言わないでしょ!?」
「え、そっちが強調してくるから俺はちゃんと認識してますよ〜って意味で言ったんだが⋯⋯」
一同唖然である。
レイという新人冒険者がぶっ飛んでるのは知っていた、実力も備わっていると。ただここまでぶっ飛んでるとは予想外過ぎた。
「レイ君、こちらギルドカードです。星二への昇格と依頼達成の報酬も足されていますので」
「さんきゅーティアさん、んじゃまた!」
真面目な仕事人ティアは2人が話している間に手続きを終わらせ、表情人使えずにレイにカードを渡した。 レイもそれまでの会話を終わったとばかりに、カードを受け取りさっさとギルドを出ていった。
「⋯⋯ん?ミレイさんどうしたのですか?」
「⋯⋯いや、先輩とレイ君って似てるところあるな〜って」
『確かに』。とその場にいた者たちは心の中で同意した。
◆◆◆
レイが帰ったあとのギルドにある一室で、4人がソファーに座り話し合っていた。
「ギルドマスター、最近登録したレイって冒険者を把握してますか?」
「この街唯一の星五のお前たちがなんの用かと思えば、その話か」
「その感じだと把握しているようですね、なら言いたいことは分かるでしょう?」
一人はギルドマスター、文字通りギルド支部を取り仕切る長である。 それとこの街出身で星五まで上り詰めた3人の冒険者が、ここ二日話題になっている新人冒険者レイについて真剣な面持ちで意見を交わしていた。
「さっさと昇格させろって言いたいんだろ?⋯⋯お前たちから見てそれ程なのか?」
「接近戦は文句なし、足運びを見るだけで震えるほどです」
「⋯⋯そこまでか。魔力の方はどうなんだ?」
リーダーの男が接近戦は太鼓判を押したところで、ギルドマスターはローブを着た魔法使いの女性に魔力量について聞いてみると、女性は顔を顰めた。
「⋯⋯正直、分からない。あれだけ動ける人は魔力量も比例して多いはずなんだけど⋯⋯あの人の魔力はとてつもなく《小さい》のよね」
「小さい?少ないではなくか?」
「⋯⋯はい、私も自信を持って言えませんが。あんなに魔力が分からない人は初めてなので⋯⋯」
「⋯⋯街の害になるか?」
思わず呟いたギルドマスターの一言に、その場に重苦しい空気が広がる。
ぶっ飛んではいるが人当たりのいいレイに、面白い新人という印象しか持ってなかったギルドマスターは、話を聞いて初めて危機感を持った。もしレイがこの街にとって害となるならば⋯⋯
「いや、いい距離感を持って接すれば大丈夫だと思いますよ。それにもしあの子が害を及ぼす気だったら、絡んできた冒険者達を殺してるはずです」
「確かにそうね」
「僕もリーダーと同意見かな」
「⋯⋯そうか、お前たちがそう判断したのなら俺も信じよう。悪いがしばらくレイのことをそれとなく気にしてやってくれ」
「もちろんですよ、ギルドマスターには新人の頃からお世話になってますからね」
「はははは!!お前らもあの頃はヒヨっ子だったよな〜。初めの頃なんかなんか──────」
こうして劇薬(レイ)の話を終えた四人は、昔話に花を咲かせた。
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