第3話
「頼んだ俺が言うのもなんだが、簡単に出来るものなのか? このダンジョンだって禁忌の森をベースに魔物生み出したんだろ? それこそドラゴンとか勝てるのか?」
「う〜ん、高位な魔物達には先に話を通しておけば大丈夫でしょ。ドラゴンやフェンリル、あとはグリフォンか。その位の存在になるとナワバリ争いとか興味なくて、勝手に自分の住処作ってのんびりしてる感じだし。禁忌の森を静かにさせることは向こうも有難く思うんじゃないかな」
「なるほどな、それなら大丈夫か」
レイとクルトが珍しく真面目な話をしている中、ティアモンドとヴァイスは将棋を指し続けていた。空洞内にかなりの間隔をあけてパチ、パチ、と駒の音が鳴り響く。どうやら終盤戦らしい。
「それにしても急になんでそんなこと頼むんだ? 私達は暇だから別にいいけど」
「こっちの世界に来る時に神に頼まれてな、人間を掃除して欲しいんだとさ」
「掃除って⋯⋯悪魔より苛烈だなぁ」
「それは俺も同感だな。 まあそんな訳で禁忌の森が落ち着けば、人が領土を巡って戦争するだろうな〜って考えたわけよ!」
「そうか、こっちは任せとけよ! レイが教えてくれた娯楽も、ここじゃないと出来ないって訳じゃないしな」
「ありがとな!」
(いよいよ人に会えるのか〜、この5年間は人外としか会話してねえからな。今から楽しみだ!⋯⋯⋯⋯掃除って言ってもそれなりの地位についてないと話にならんし、無難に冒険者にでもなって高ランクを目指すかね〜)
「最初はどこに行きたいんだ?送ってやるから言ってみ〜、やっぱりコンタリア王国?」
「いや、大国だからこそ行きたくないな。ぜってぇ面倒事に巻き込まれる!⋯⋯ウォスカトスかエタゾークだな 」
「港の国に農業の国か、てっきり武の国に行くかと思ってた」
「ジェズアルドはコンタリアの次に面倒だろ、活動を始めるなら小国且つ平和な国が1番だ」
「人とは面倒な生き物だな⋯⋯私も時々街に出るが『遂にヴァイスに勝ったぞ!儂はやり遂げたのじゃーーー!!』⋯⋯⋯⋯」
どうやら将棋はティアモンドが勝ったらしい。狂乱しているティアモンドにイラついたのか、ヴァイスは静かに剣を抜いた。
「クルト、ここから離れよう」
「あぁ、それがいい」
人外の喧嘩など止めるなど面倒でしかない2人は、静かにその場を離れた。
◆◆◆
「⋯⋯結局、ティアモンドとヴァイスに別れの挨拶出来なかったな。まあ今生の別れでもないし良いか!」
あれから少しして、みんなでダンジョンから出てレイは大陸一の港を持つウォスカトスへ、3人は禁忌の森へ移動することになったのだが⋯⋯2人の喧嘩が予想以上に長引き、呆れたクルトはレイを先にダンジョンの外へ出した。
ウォスカトスは小国と言っても街が2つ3つでは無い、コンタリア王国が大きすぎるだけである。 港町はもちろん首都になっている訳だが、レイは敢えて
街の入口で門兵による検問街であるレイは心を踊らせていた。
「次⋯⋯見ない顔だな、どこから来たんだ?」
「近くの村に住んでたんだが家業を継ぎたくなくてな、飛び出してきたんだ! この街で冒険者を始めようと思ってる、ギルドカードは身分証明になるって聞いたからな」
「⋯⋯まあ良いだろう、街に入るには300リル払って貰うんだが⋯⋯⋯持ってないだろうから、稼いだら払ってくれ」
平民が着るような服で荷物も特に持ってない、身ぐるみひとつで街に来るような奴を疑うなと言う方が無理である。
「おっちゃん優しいな、恩に着るぜ! 沢山稼いだら美味い飯奢ってやるよ」
こういう小さい街では警備兵との関わりが重要だと、何となくではあるが察したレイは相手の気分を害さないように気をつける。
「はっはっは! それは嬉しいな坊主、その時を楽しみにしているよ」
(別に坊主って言うほどガキじゃ無いんだけどな、背丈も180cmはあるぞ? まあこんな格好してりゃそういう扱いになるか)
いよいよ異世界での本格的な生活をスタートさせるべく、街の門をくぐった。
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コンタリア王国の大きさは中国と同じくらいと思っていただければ良いかと! それに比べれば小国と言えどもかなりの領土を持っている事になりますので⋯⋯。
この世界での通貨→ 1リル = 1円
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