第2話
「レイ、今ババ抜きをしておる! これが終わったらお前も混ざれ、3人ではちと盛り上がりにかけるからな!!」
『レイ坊か、儂もようやくトランプで遊べるようになったぞ』
「⋯⋯⋯⋯」
3人の正体は執事が悪魔、骸骨がリッチ、首なし騎士がデュラハンである。 レイとは前世での名前そのまま、漢字で書くと玲と書く。偽名を使うのも面倒だからとそのまま名乗ることにした。 レイと呼び捨てするのは悪魔のクルト、レイ坊と呼ぶのはリッチのティアモンド、デュラハンはヴァイス。ヴァイスとは意思疎通は出来ないので、通訳してもらっている。
「それにしてもレイがここに来てから5年か〜」
『初めは驚いたぞ、このような場所に人間が入り込んで来よったからな! むっ⋯⋯』
「⋯⋯」
「あ、ティアモンドが今ジョーカー持ってるぞ! あとヴァイスはなんて?」
『なっ、何故分かったのじゃ!?』
「あーレイ、ヴァイスは4人でトランプ出来て嬉しいってさ」
今でこそ和やかな時間をこの3人と過ごせているが、初対面はそうなるわけもなかった⋯⋯⋯⋯
◆◆◆
異世界に来てから2週間経った頃、俺はある違和感に気づいた。 この大樹海に生命体が存在しない。大いに焦って小屋から離れすぎないように、探検したもののやはり生き物はいなかった。
そんな時に洞窟を見つけ3人に遭遇した⋯⋯
(あの時はまじ死んだと思った、異世界で最初に戦うの普通ゴブリンとかスライムじゃん? それが悪魔にリッチにデュラハンって⋯⋯あの時は本気で神を呪ったね!!)
ひとつ間違えれば死ぬと直感したからか、前世でのアドバンテージを活かす事にした。 日本で食べた様々な料理や娯楽も3人に沢山教えた、ただ問題だったのは大樹海に生命体が居ないこと。それをクルトに説明すると驚きの事実を言われた、《この森はダンジョンである》と⋯⋯しかもクルトがダンジョンマスターだと。
クルトに相談して大樹海に魔物を大量に生ませてもらい、狩った肉や山菜、木の実など使い前世の料理を再現した。さらに興味を持ってもらうために、自分が違う世界から来たことを話した。 そこから色々話してるうちに娯楽も教えることになった。
料理と娯楽を対価に3人に修行を付けてもらった。ティアモンドには魔術を、ヴァイスには剣術を習った。 クルトは悪魔なだけあって、度々ダンジョンを出て人に紛れて行動してた為、この世界について色々教わった。
(そんな紆余曲折あって今に至るけど⋯⋯ほんとよく生き残ったよな〜〜、奇跡に近いんじゃねーか?)
「おい、ボケーッとすんなレイ!お前の番だぞ」
「おっとすまん⋯⋯⋯⋯あ、上がった」
『もうか!? ズルしてないだろうな!!』
「⋯⋯⋯⋯」
相変わらずヴァイスは何を言っているのか分からないが、団欒は続く。
「そう言えばクルト、そろそろダンジョン出たい」
「ん、そうか。レイも大分強くなったし良いんじゃないか?」
『儂も特に反対はせんよ、今のレイ坊なら簡単に死ぬことはあるまい』
「⋯⋯⋯⋯」
3人のお墨付きも得られた事で(ヴァイスは頷いてただけ)ダンジョンの外に出る決意をする。クルトに教えてもらった情勢について思い出してみる。
広大な大陸に多くの国が存在しているが、中でも大陸の三分の一を領している【コンタリア王国】は大陸一の大国だ。コンタリア王国の半分ほどの領地を持つ【ウェーンブル帝国】、更に領土は狭いが【スークプト】、大陸一の港を持つ【ウォスカトス】、農業が盛んな【エタゾーク】、武を重んじる【ジェズアルド】が主要な国になる。
位置関係は時計回りにコンタリア王国は北東、その下にスークプト、南端にはエタゾーク、南西にウォスカトス、その上にジェズアルドがあり、北西をウェーンブル帝国がある。 ただ領土争いは全くと言っていいほどない、その理由は大陸中央にある禁忌の森が影響している。
禁忌の森は凶悪な魔物がそこら中にいて、ナワバリも安定していない。頻繁に森から出ては街を襲っているため、戦争などしてる暇がないと言った方が正しい。
(そう言えば神に掃除頼まれてんだったわ、しかし外の様子を知らない状況でどうしろと⋯⋯⋯⋯あっ)
「クルト、禁忌の森を治めて欲しいんだけど」
「ん、良いよ〜」
「禁忌の森が落ち着けばその内戦争は必ず起きて少しは掃除できるっしょ! ⋯⋯まぁそれでも残ったクズは随時対応していけばOK!!!」
『いきなり煩いわレイ坊! 儂はヴァイスと将棋を指しとるんじゃ、ちと黙っとれい!!』
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
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