【悪鬼】と呼ばれた転生者 ~ちょっと脳筋な主人公が神からの使命を遂行しつつ異世界を席巻する~

ムンク

第1話

「⋯⋯どこだ?」



 どこを見ても真っ白な空間、壁などは無くどこまでも続いているようにも見える。



「ようやっと目覚めたか。ここは聖域、又は精神世界とも言える。お主には異世界に行ってもらう」



(白い空間に佇む老人、ね⋯⋯何となく予想はしてたけどやっぱりか。焦ってる様子は無いし時間に余裕はあるのだろう、色々聞いてみるか)



「元いた世界に未練とかないけど、俺の身体はどうなってんの?」


「お主の存在が無かったことになっておる」



(おぉう、なかなかエグいことするな。

 存在を無かったことにするとか⋯⋯意外と乱暴な神だな! いや、神だからこそ人一人の事など些事ってことか。皮肉だけどモノホンの神らしいな、となると次は⋯⋯)



「そっちの世界は魔物とかいるんだろ? 生き残る力が欲しいんだが」


「ほぅ、魔物の存在を知っておるのか⋯⋯面白い。力については心配いらん、ある程度努力すれば強くなれるようにしておくゆえ」


「それはありがたい⋯⋯あー、あとは今から行く世界で使命とかある? 魔王ぶっ倒せとか勇者の暴走止めてくれとか」


「やけに詳しいの⋯⋯ま、敢えて問い質したりはするまい。これといって成して欲しい事は無いぞ、強いて言えば人の掃除をして欲しいくらいじゃ」



(人の、掃除??

 またこの神はとんでもない事を言い出したな、俺はダイソンじゃねーぞ!?)



「そんなにクズな連中が多いのか?」


「数は多くない、だが権力を持っている者が大抵救えんやつなのじゃ」


「所謂、貴族って存在か」


「詳しすぎ⋯⋯問わないと言ったばかりだな。 もちろん完璧にやれとは言わん、ある程度やってくれれば良い」



 そりゃ完璧にやったら世界中から指名手配されるだろうよ、あとは聞くことは無い⋯⋯あ、大事なこと忘れてたぜ。



「あ、容姿はそっちの世界に合わせて欲しい。年は15くらいで頼む」


「そのくらい容易い、ではそろそろ送るとするかの。せいぜい楽しむが良い」



 そこら辺にいる年寄りに見えるけど、言ってることは乱暴過ぎて逆に神という存在に信憑性があったな⋯⋯。




 ◆◆◆




「⋯⋯⋯⋯あれから5年か」



 懐かしい会話を思い出しつつ目を覚ますと、既に太陽が顔を出していた。



「こっちの世界に来た時からこの小屋あったけど、あの神が用意してくれたんだろうか?」



 小屋を出ると周囲は木々に囲まれていて、風が言の葉を揺らしている。

 美味しい空気を吸いつつ、近くにある一際大きな木の上目掛けて、ジャンプで一気に登り景色を眺める。



(言うてこの景色も飽きてくるよな〜、何処までも続く木、木、木。まさに大樹海そのもの! 最初見た時は感動したけど⋯⋯今じゃ真ん中から上は青、真ん中から下は緑。としか感じなくなっちまった)


「空気が美味いから毎朝この景色を見てるのもあるけどな⋯⋯⋯」



 近くに流れる川で顔を洗う時水面に顔が映る。神に頼んで容姿を変えてもらったが、もちろん最初は慣れなかった。暗めの赤毛にサファイアのように輝く瞳、キリッとした印象を受ける顔立ち。前世より100倍はカッコよくなっていた。


「マジで神に感謝だな〜、この世界のイケメンがどのくらいか分からんけど。まぁ貴族とかになればこの顔も埋もれるだろ⋯⋯⋯⋯さて、ご近所さんに挨拶行きますかね〜。そろそろここから出て街に行きたいし」



 近くにある洞窟を入り細い道をしばらく進むと、小さな空洞に出る。その奥に水晶がポツンと置いてあって他には何も無い。 水晶に近づくと光を帯びて空洞全体を照らす、目を開けると先程の空洞とは全く違う場所に一瞬で移動していた。



「おーい、久しぶりに来たぞーー!」


「む? レイか! 久しぶりと言うても数日しか経ってないぞ?」


「人間からしたら数日も充分久しぶりなのよ」



 そこにはタキシードを来た執事、フード付きのコートを来た骸骨、鎧を着た首のない騎士がトランプをしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る