第8話 勝負

くまさんと望乃さんが違う道に歩いて行き、残された僕たちは再び歩き出しました。

愛莉ちゃんの顔を見ると何故か落ち着かない様子だった。


「愛莉ちゃんどうしたんですか?」


「別に・・何でもない。あんまり話しかけてこないで」


「何もないならよかったです!話は変わりますけど、愛莉ちゃんは部活とか委員会とか入るんですか?」


「私今、話しかけてこないでって言ったんだけど・・。まだ決めてない」


「僕は飼育委員があったので、そこに入ろうかなって!僕も部活はまだ決めてないです」


「そう。」


「あの・・・愛莉ちゃんさっきの言葉は気にしてなのでえーっと、元気出してくださいね!」


私が冷たい態度をとっているのに、いつも私を気遣ってくる。

そんな蒼唯を私は・・・・・?私は蒼唯を嫌いなはず・・・・。

とりあえず蒼唯が隣にいる今、私にそんなことを考えている暇はない。


「別に私は元気・・・。もう私に気を遣わないで。蒼唯、私はこれからもあなたと仲良くなるつもりはないし、これからも最低限しか話さない」


そんなことを言われてしまったら僕は、逆に仲良くなることに燃えますよ!!

まずは可愛いものが好きな愛莉ちゃんに微笑みながら諦めないことを宣言しましょう!まあ、まだ僕のことを可愛いと思っているかは分かりませんけど。


「うーん。じゃあ話してくれるように頑張りますね!」


なっ!?

この子全然めげないんですけど!!しかも微笑みながら言うのがずるい!

?今なんかどこかがキュンってしたような・・・

とりあえず一回落ち着こう。



愛莉ちゃんが顔を背けてしまった。

うーん、効果なかったのかあったのか分かりません。次は何を話すか悩みますね。

悩みすぎるともう少しで家に着いてしまいますし・・・。


「今度一緒に服を買いに行きませんか?」


あっ、つい遊びに誘ってしまいました・・・あはは。

返ってくる答えは、


「絶対行かないよ」


デスヨネ・・・。

そして家の前まで辿り着いてしまった。

仕方ない、こうなったらもうあれしかない!


「愛莉ちゃん僕と勝負しましょう!近々ある数学と英語の小テストの点数の合計が僕のほうが高かったら、買い物に行きましょう!」


「・・・・。分かった、受ける。もし私が勝ったら私に関わらないで」


「分かりました!それじゃあまた明日!!」


そう言って蒼唯は自分の家に帰っていった。

残された愛莉はあれでよかったのか少しの間その場で考えて家に帰った。





さっきの会話から何時間経っただろう。僕は自分の部屋でイルカのぬいぐるみを抱えながら考えていた。


勝負に負けた時のことは考えなくていいと僕は思った。勉強は出来るほうだけど自信がそこまであるわけじゃない。でも勝たなくてはいけない。


幼い時から可愛いものが好きだったし、僕の周りには愛莉ちゃんと秋さんなど可愛いものが好きな人が居て、僕の性別関係なしに女の子の服を着せてきたりと女の子寄りな育て方をされてきた。

あっ、別に嫌だったとかそんな生き方嫌だったよーとか思ってないです。

ただ、男の上位種「漢」というのは男女関係なく心に持ち合わせているので、僕はテストで漢を見せます!という話ですへへ。


今度くまさんと勉強会をするのもいいかもしれません。

愛莉ちゃん覚悟してくださいね!



蒼唯が考えをまとめていた時一方の愛莉は、親友の桜望乃に助けを求めていた。


蒼唯との勝負をどうしようか何時間も私は一人で考えていた。


「はぁー。私勉強での蒼唯との差は中学で見たときはあんまりなかったのは覚えてるけど、中学の時より難しくなるって思うと・・・んー」


一人で考える私は終始こんな感じだった。

こうなったらさくに頼るしかない!と思いすぐに携帯に手を伸ばして、


「さく!どうしよう、蒼唯と数学と英語の小テストの合計の点数で勝負することになっちゃったー!」と送信した。

するとすぐに返事が返ってきた。

「何やってんのよ、おバカ。それで何で勝負することなったの?」

私はあの時の会話の内容を簡潔に話した。

「長くなりそうだから、電話で話さない?」

最初から電話すればよかったと思った私でした。


「まあでも、仲が険悪になる~とかそんな感じじゃなくて安心したよ!」


「まだ蒼唯と私を仲良くさせるつもり?というか今大事なのはテストの方!」


「はいはい、分かったってあははは!それじゃあ勉強会でもするかい?愛莉君」


この時、勉強会とか普通にしちゃうけど私蒼唯ちゃんが勝つって信じてるからね!と心の内で思っている望乃だった。


「お願いします!!さく先生!」


「あの、一応聞いておきたいんだけどもし勝っちゃって蒼唯ちゃんと一生関わらなくなっちゃってもいいの?」


さくに聞かれ考える。

私の出したあの条件は思いついた瞬間に何も考えずに言い放った言葉だった。

関わらなくなった時のことを想像してみた。

その時自分のどこかに穴が空いたような気がした。

蒼唯が嫌いと思っていた私は喪失感なのか何なのか、この時はまだわからなかった。


その後少し何気ない会話をして電話を切り私はやることをやってから、眠りについた。

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