一学期
第3話 入学式前日➀
ふぁあ~。とあくびをしてベッドから体を起こして、自分の部屋の窓を開ける。
今の時刻は4時50分。
入学式が目の前まで近づいてきたからワクワクと緊張で早く起きてしまった。
起きたてで肌寒くキャミソールの上に近くに置いてあった膝掛けを羽織り、再びベッドのほうに向かい腰を掛ける。
枕の横には蒼唯のお母さんからあの時に貰ったくまのぬいぐるみがある。
私はくまのぬいぐるみもといクマ子さんを手に取り抱いた。
蒼唯が嫌いだからと言って、蒼唯関係のものが嫌いになるとかは無い。
それに蒼唯ママが作ったぬいぐるみは不思議と心が落ち着いて母の温もりを感じる・・
別に私がお母さんに愛されてないとかそういうのではない。
私のお母さんと雰囲気が違うからなのかもしれない。
私のお母さんは、ちょっとおっとり系で甘えやすいタイプのお母さんだと思う。
蒼唯ママは強気なんだと思うんだけど、蒼唯の可愛さでふわふわした雲見たいな暖かくて柔らかな?お母さんになってる。
そう蒼唯は嫌いだけど可愛いのは昔から変わってない。
どんなに私に冷たくされようが健気に話しかけてきて、その可愛さでついつい挨拶は返してしまう。
というかこの前の三つ編み姿、あれなに?すっごい可愛くてびっくりした。
蒼唯に三つ編みなんかさせたら可愛さ倍増するんだからやめてほしい。
私は蒼唯と・・・・・・・・。
また蒼唯のことを考えてしまった。
小中と同じ学校だったため嫌いとはいえ蒼唯に対して自分の中でルールは決めてある。可愛いは認めるなりとか必要最低限の会話しかしないとか傷つけることは言わないとか。
でも高校は流石に一緒にはならないでしょ。
今の時刻は6時10分。
蒼唯のことを考えていたら結構な時間が過ぎていた。
「お腹すいた。冷蔵庫に卵あるかな?」
私の最高の朝食は半熟のスクランブルエッグの上に千切りキャベツを乗せて、ケチャップをかけて焼いたベーコンを上に乗せてブラックペッパーを少量振りかけたあと小ねぎをたっぷり撒けば完成する!ご飯でも食パンでもいける最高の朝食!!
冷蔵庫を開けると卵がしっかりあったため一安心する。
ベーコンは無かった。
卵があれば正直大丈夫。少し最高値が下がるだけで美味しいのである。
作り終わって食べていると、お母さんが起きてきた。
「おはよ~。」
「おはよ。お母さんぽわぽわしてる。」
私のお母さんは寝起きの時はいつも以上にふわふわぽわぽわしている。いつもかわよ。
いつもなら対面に座って話すんだけど、今日は何故かバッグハグしてきた。
「もう高校生になっちゃうんだね~。はやいねぇ~。よ~しよ~し」
すごいふわふわして半分寝てなでながら言っている。
「そうだね。お母さんとお父さんと周りの皆のお陰で・・・楽しく、その・・ここまで過ごして・・来れました。・・・ありがとっ!」
照れ隠しでニコッと笑ってお礼を言った。今お礼した人の中でお母さんしかここにいないんだけどね。。。
「グスッ。・・・なんていい朝なんだ。あれ雨が・・ぅぅ」
ん?今私たち以外の誰かのというか・・・。お父さんの声が玄関のほうから聞こえたような・・・。
「ふぅー。高校頑張ってな!泣」
「お父さん!?聞いてたの?」
はずかし・・・・
「仕事行ってくる!!・・・よし今日は張り切っちゃう」
「いってらっしゃい・・・・」
朝弱いのにめっちゃ元気になって仕事に出かけて行った。というかお母さんは?
「すぅ~。すぅ~。むにゃ」
ねてる。。
「すぅ~。あおいちゃんと・・すぅ~。こうこうではなかよくなるのよ~。むにゃ」
!? 蒼唯の名前がなんで今出るの?
高校だって一緒かもわからないのに。
「ふにゅ。あおいちゃんね~。愛莉と同じ朝陽川高校に通うらしいわよ~」
急に起きたお母さんの口から衝撃の一言が。あの可愛さの塊がまた三年間一緒にいるなんて、あの可愛さでもう冷たい態度取れなくなっちゃう。
でも、そしたら・・もしかしたら。また・・・。
「・・・そうなんだ」
「まだ仲直り出来てないの~?それとも・・・」
「それとも?」
「私が愛莉ちゃんに言うのもあれね~。なんでもないよ~ふふ」
「?何のことかよくわからないけど、今日もお母さんは可愛いよー!」
毎朝恒例の誉め言葉を言う。なんか私に可愛いって言われると活力が湧いてくるらしい。
「可愛い」は誰かを救う効果でもあるのかな?なんて変なことを考えていると・・・。
「そういえば愛莉ちゃん、ままね~。中学校の家庭科の先生になったよ~!」
え?ん?
「おめ・・でとう?がががんばってね」
またも爆弾を脳内に投下されそのままぼんやりとショートした脳で過ごした。
そうして蒼唯に会う時の心構えを整える前に入学式を迎えることになる。
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