第4話 出発の日の朝

 夜中に目が覚め、洗濯物を入れるビニール袋を忘れていた事に気づき、用意した。それから、目覚まし時計を入れていたが、そのままでは心配なので、タオルでくるんだ。

 朝6時に起きた。そして、やっぱり3日目の寒さが心配になり、ヒートテック(温かい肌着)も一枚持っていく事にした。直前までそんな事になっているのは初めてだ。用意周到な私が、そうでもなくなっている?年のせいだろうか。いやまあ、コロナ禍によってしばらく旅行をしなくなっていたので、あれこれ忘れてしまっているのかもしれない。ただし、去年の8月には一人で金沢・富山へ旅行に行ったのだが。

 私がいなくても、夫と二人の息子は大して困らない。ほとんど家にいないし、食事は外で済ませればよい。家で食べるなら、冷蔵庫や冷凍庫の食材を好きに使っていい。ただ、洗濯だけが少し困るらしい。夏に一人旅をした際、何も言って行かなかったら、夫が朝洗濯機を回し、長男が干し、次男が畳む、という役割にしたそうだ。だが、前回は長男が夏休みだったからできた事だ。今回は息子たちには大学の授業があり、バイトもある。だから、洗濯はしなくてもいいと言って、夫の新しいパンツを何枚か出しておいた。

 夫をいつもより少し早めに起こし、私はスーツケースを持って家を出た。朝は肌寒いのでウインドブレーカーを羽織った。さあ、まずはスタバで朝食を買えるのか、という問題が立ちはだかる。スタバは注文が難しい。私はずっと前に一度か二度行った事があるばかりで、全く慣れていない。でも、せっかくチケットをもらったのだから、使うのだ。

 スタバに関する事もあれこれ調べた。こういうところは、どうしても用意周到にならざるを得ない私。不安を解消するために、調べずにはいられないのだ。

 私はカフェインがダメなのだ。だから余計にコーヒー専門店には足が遠のいていた。昔、スタバのカフェインレスメニューについて調べた事があったのだが、メニューになくても裏メニューにあるらしいという事だった。しかし今回調べてみたら、今はちゃんとメニュー表に、

「デカフェ¥50」

と書いてあるらしい。デカフェ、つまりカフェインを抜くために50円かかり、10分程度待たされるという事だった。でも、いろいろなコーヒーメニューがあるものの、そのほぼ全てのメニューをデカフェにできるのだからすごい。日本にもカフェインレスが浸透してきて嬉しい。あ、スタバは日本のものではないか。

 羽田空港に着いた。なかなか電車が混んでいたが、無事にフライトの1時間半くらい前に行くことができた。

 まずはスーツケースを預けよう。搭乗チケットはスマホに入っている。そういえば、飛行機のシステムも乗る度に変わる。大昔はカウンターにチェックイン手続きをしに来て、そこで座席を決め、荷物を預けた。それから、チェックインが機械でできるようになって、その後ANAではスキップサービスが導入され、チェックインなしで保安検査場へ行けばいいという風になった。その時にはQRコードを印刷して行って、それを搭乗する時に機械に読み込ませた。

 ところが今回は、スキップサービスが終了したという。チェックインを省略するのではなく、スマホなどでチェックインをするのだ。オンラインで。搭乗日前日になるとメールが送られてきて、オンラインチェックインをする。そうすると、搭乗券となるQRコードが送られてくるのだ。その他、メールで搭乗が開始されたとか、あれこれお知らせが届く。便利になったと言えばなったな。しかも、搭乗時間が遅れたりすれば、リアルタイムでお知らせが来る。そのオンラインのチケットならば、搭乗時間が変更になると、ちゃんとそれが反映されたチケットに変わるのだ。いやはや。


 スーツケースを預け、まだ1時間以上前だけれど、保安検査場へ行った。Cゲートに並んだ。けっこう混み合っている。

 ペッパー君と思われるロボットがいた。なんだか後ろを向いてしまっていて、ガラスの衝立の方へペコペコ頭を下げている。気の毒な気がして、けれどもちょっと可笑しくなって、写真を撮った。すると、ペッパー君は少しずつ回っていることに気づいた。なるほど、今はちょうど後ろを向いてしまっているが、徐々に前を向き始めている。360度対応なのか。

「8時半のフライトのお客様はおられますか!?」

という、ちょっと勢いのある呼びかけがあり、数人が手を挙げた。もう8:00だ。8時半の人はこんな行列に並んでいる場合ではない。大丈夫なのだろうか?私は9:15のフライトなのに、早く来過ぎてしまって申し訳ない。

 10分くらい並んで、やっと保安検査だ。

「上着を脱いでください。」

と、前の人が言われているのを聞き、ウインドブレーカーを脱いでトートバッグに入れた。のどが少し渇いていたが、ここで液体があると保安検査の人のお手を煩わせる事になるので、飲み物を持って来なかった。

 スムーズに保安検査を通った。8:13になっている。あと1時間でフライトだ。さあ、いよいよスタバだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る