第14話 怒り

「いい加減にしてください!! 」


 普段出さない大きな声を上げ、理子は智介だけを睨む。


「お、おい。どうしたんだよぉ? 」


 流石の智介も、理子の様子の変化を感じ取ったようだ。ご機嫌を取るために理子の怒りの鎮めようとする。


「うるさいです!! 余計なことしないでください!! 」


 理子の怒りは収まらない。より怒りが増幅する。


「さっきから聞いてれば先輩の悪口ばかり!! 嘘の事実も勝手に作り出す始末!! 実際に先輩が何か悪い事したんですか? 」


 智介に詰め寄る勢いで、理子は追い込むように問い詰める。


「…そ…それは。え~っと」


 正確な回答を用意できない智介。理子の威圧にも圧倒され、目も逸らす。


「どうしたんですか? 答えられないですか? それはそうですよね。多月さんが都合よく先輩が悪くなるように捏造したんですから。本当にダサい」


「…」


 一方的に理子からの責めを受ける智介。既に俯いた状態をキープする。


「もういいです!! こんな人と一緒の場所に居たら、気分が悪くなるだけです!! 先輩、行きましょう!!」


 影人の手を強引に取り、理子はこの場を立ち去る。どんどん理子達と智介の距離が拡がる。


「お、おい。待てよ」


 呼び止めようと試みる智介。


 しかし、智介の声は理子に一切届かなかった。

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