第13話 球技大会

 あれから数日が経過した。


 本日は1時間目から球技大会が行われる。球技大会の種目はバレーボールだ。


 先日に球技大会の準備を終え、影人は実行委員の仕事を終えていた。


 球技大会は1年、2年、3年を混ぜたトーナメント制だ。すべての学年の中からキングを決める大会だ。


 まずクラスの中でAチームとBチームが作られる。


 傾向的にAチームが1軍、Bチームが2軍といった形を取る。


 陰キャでボッチの影人はBチームだった。


 2年と3年のAチームと対戦した。そのため、早々にトーナメントから敗退していた。


 敗退したチームには試合が無い。そのため、影人は暇を持て余していた。


 暇を潰すために、影人は誰も居ないクラスの教室に戻ろうと試みる。


「先輩。どこに行く予定ですか? 」


 昇降口に到着した辺りで、偶然にも近くを通り掛かった理子が声を掛ける。


「村井か。…暇だから教室で待機する予定だが」


「あぁ~。先輩のチーム早々に敗退してましたもんね。暇でしょう」


「見てたのか? 」


「たまたま試合の近くを通りましたので」


「そうか。そう言う村井のチームはどうなんだ? 」


「一応、決勝トーナメントには進みましたよ」


「それはそれは。おめでとう」


「全然感情籠ってないですよ」


「ああ。実際には思ってないからな」


 影人と理子が会話を交わす最中、智介が昇降口前に現れる。仲の良い陽キャと共に構想しておらず、1人である。


「おぉ!! 村井じゃないか!! よぉ!!! 」


 理子を発見すると、智介は嬉しそうな顔を浮かべる。一瞬だが表情も緩む。


「…あぁ。多月さんですか…」


 目を細めて気怠そうに対応する理子。先ほどまでの影人との対応とは天と地ほど異なる。


「相変わらずの塩対応だな。それにしても。どうして村井とクラスのボッチの胸元が一緒に居るんだ? もしかしてウザ絡みされてるのか? 俺が助けるぞ!! 」


 理子の前でカッコいい所を見せたいのだろう。影人に立ち塞がるように素早く理子の前に移動し、智介は守るように睨み付ける。


(はぁぁっ。こいつなんだよ)


 顔には決して感情を出さず、影人は胸中でうんざりする。


 智介と言う存在が鬱陶しい。影人にとって邪魔者でしかない。


「いや。余計なお世話ですから。邪魔だから。どいてくれません? 」


 明らかに嫌そうな顔で、理子は智介を拒絶する。


「そんなこと言うなよ!! もしかして!! この陰キャに弱みを握られてるのか? そうだよな? 間違いないよな? 」


 理子の冷たい態度を好意的に捉えているのだろうか。智介は勝手に嘘の事実を作る。影人が悪いように。


 パァァァンッ。。。


 空気が弾けるような音が生じる。


 智介の頬が痛々しく赤く染まる。


 動揺を隠せない智介の目の前には、右腕を振りかぶった後の理子の姿が有った。

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