第11話 千佳の過去
中学時代。千佳には1人の親友がいた。
名前は山辺といった。
千佳と山辺とは小学生からの仲であった。
小学生時代は6年間すべて同じクラスであった。
何度も自宅を行き来し、遊んだ。いわゆる親友という仲であった。
そんな千佳と山辺は中学に上がっても同じクラスになった。1年も2年も同じクラスであった。特に喧嘩もなく、1年間を過ごした。
変化が起こったのは中学2年の2学期。
その時期、千佳は山辺と共に陽キャの集団に属していた。いわゆる1軍と呼ばれる集団だ。その陽キャの集団は千佳と山辺を除き、5人であった。
千佳と山辺以外の3人の女子はクラスでもスクールカーストがトップレベルであった。千佳と山辺と比べて、持つ権力が大きく異なった。
「山辺ってうざくない? 」
「山辺って付き合い悪いよね」
「鼻につく態度よね」
2学期の中間の時期に、3人の女子は山辺に目を付け始めた。
山辺の自然体な言動が陽キャの3人の女子の逆鱗に触れたのだろう。
溜まった鬱憤を晴らすように、いじめが始まりを迎える。
千佳達の所属する集団からの突然の除外。徹底的な無視。私物隠しなど。王道ないじめが展開された。
おそらくスクールカーストトップレベルの3人の女子が恐かったのだろう。
山辺は一切なにも抵抗せずに、いじめを受け続けた。
一方、千佳も3人の女子達を恐れていた。
自分が山辺の代わりとして目の敵にされることが怖くて仕方なかった。そのため、一方的に無抵抗でいじめを受け続ける山辺を、千佳は一切助けなかった。心配の言葉さえも掛けなかった。
SNSのグループでは女子3人に共感するように悪口を呟いた。3人に加担し、山辺に対する集団無視にも協力した。
そのいじめが2週間ほど続いた。
山辺の精神は呆気なく崩壊し、学校に来なくなった。
千佳の親友だった山辺は不登校になってしまった。
山辺が不登校になった事実は千佳の精神を憂鬱に追い込んだ。
だが、次の標的は自分になるかもしれない。
その恐怖の感情が勝っていた。
だから、スクールカーストトップレベルの女子3人に絶対に嫌われないように、千佳は常に気を遣い続けた。少しでも不快感を与えないような言動を常に意識した。
この時期の経験が千佳に大きなショックを与えた。
千佳にスクールカーストの高い陽キャに対する恐怖心を植え付けた。
時が流れ、千佳は3年生に進級した。
女子3人とはクラスを離れることになった。
そこは安心材料であった。
偶然にも千佳と山辺は3年でも同じクラスに配属された。小学校と合わせると9年間も同じクラスになった。
しかし、山辺が1度も学校に登校することはなかった。卒業まで不登校は続いたのだった。
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