第6話 幼馴染と遭遇
あの後、無事に帰路に就けた影人。
自宅から学校まで近いため、15分ほどで自宅前に到着する。
「あ…」
聞き覚えのある女子の声色が影人の鼓膜を刺激する。
音源の方向にゆっくり視線を向ける。
つい最近まで片思いを寄せていた初美玲央奈の姿が目の前に有った。強い人間の智介に心を奪われた影人の幼馴染。
自宅が隣同士なため、帰宅途中で遭遇することは不思議ではない。
「…」
返事の言葉を発さず、適当に軽く頭だけ下げる。
用は済んだとばかりに、影人は玲央奈から視線を外す。
学生カバンから自宅の鍵を取り出し、ドアのロックを解除する。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
慌てた口調で影人の制止を試みる玲央奈。明らかに顔には動揺が走る。
「なに? 」
ジロリッと睨むように目だけ器用に動かす影人。早く帰りたい空気を意図的に醸し出す。
「何か変だと思う。今までの胸元君じゃないみたい。優しかった胸元君とは大違いなような。何か有ったの? もし有ったなら話聞くよ」
玲央奈は不安そうに尋ねる。
(こいつ自覚無いんだな。はっ。まぁ世の中そんなもんか)
「初美さんの勘違いだと思うよ。それに何もないから安心しなよ」
話は終わったと言わんばかりに、影人は玲央奈から視線を外す。ドアに取っ手を掴み、引いて開放する。
「1つだけ覚えておいた方がいいよ。俺は決して優しくないから」
残酷とも冷酷とも取れる言葉を残し、返事を待たずに自宅に入る。
念のため自宅の鍵を閉める。玲央奈が入れないようにするためだ。
「ふぅぅ~~」
ストレスと疲労感が身体全身を襲う中、影人は玄関で靴を脱ぐ。
玲央奈に関する情報を脳に組み込むだけでストレスが掛かる。その結果、疲労も蓄積する。
「これで終わりにするか」
制服からスマホを取り出す。
慣れた手付きでロックを解除する。
携帯内で玲央奈も連絡席を検索し、まずブロック。
次にチャット系SNSカインの連絡先もブロックした。
不思議と邪魔者が消えた感覚を味わう。
気持ちが格段に楽になった。
「少しベッドで寝るか」
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