第3話 学級委員
朝のホームルーム終了後、いつも通りすぐに1時間目の授業が始まった。
その1時間目も終え、影人は飲み物を買いに自動販売機へ向かう。自動販売機は教室と同じフロアに設置される。
目的地に到着すると、小銭を投入し、適当にお茶を購入する。
喉を潤す水分が有れば十分だった。
自動販売機から吐き出されたペットボトルを取り出し、影人は教室に戻ろうと試みる。
「胸元君! ちょっといいかな? 」
目の前から走る女子生徒が声を掛ける。
「…なに? 」
気怠そうにペットボトルから目の前の女子に視線を移す影人。
影人の目にはクラスの学級委員が映る。
黒髪ロングヘアに紺色の瞳。乳白色の肌に整った鼻。薄い桃色の唇を持った美少女である。隠れながら多くのファンを持つ人気者だ。その上、影人のクラスの学級委員である。
「胸元君、大丈夫? 何か昨日と全く雰囲気が違うよ。あんな言い方も聞いたことなかったよ」
心配そうに影人を見つめる千佳。
教室での急な影人の態度の変化に、ただなる衝撃を受けたのだろう。影人には容易に想像できた。
「気のせいじゃない。俺は何も変わってないよ」
適当に流すため簡単な嘘を吐く影人。正直に何でも話す必要は無い。
「私は。…私は多月君を中心とした男子達の胸元君に対する行いは前から絶対におかしいと思ってた。明らかに理不尽だった」
(ふ~~ん。この学級委員は、そんな風に俺に対する陽キャの扱いを捉えていたのか)
クラスメイトで智介を中心とした陽キャの行いに否定的な人間が居るとは。影人にとって意外であった。
だが、それだけの感情しか湧かない。
「そうだね。君がそう思うなら、そうなんじゃない。正しいんじゃないかな。多分」
これ以上、長話をする気は無かった。
置き去りするように、影人は千佳の真横を通過する。
「ちょ。待って」
千佳の制止の言葉をスルーし、ひたすら教室へと進む影人であった。
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