第7話ー④「親切」
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結局、二人三脚は石倉先生のチョイスで、別の男子生徒がやることになった。
私は希望通りの玉入れと借り物競争に落ち着き、昼休みを迎えた。
昼食時、私は宮本さんに追求された。
「何で、晴那の誘い断ったん?」
「面倒くさいから」
冷淡な言葉に、宮本さんは呆れた表情をしていた。
「感じ悪」
「それを決めるのは、羽月さんですわ。個人の意思は尊重すべきですわ」
さも当然のように、矢車さんが席に割り込んで来た。
「そうかもしんないけど、あんな言い方しなくても」
「私は脚を引っ張りたくなかっただけ。それに・・・」
私には、他人に触れられない。触れたら、気分を害することを、暁も間宮さんも知っているはずだ。
あの場の勢いで、断らなければ、大惨事になっていた。
「ごめんごめん。そうだよね・・・。やっぱ、他人には触れたくないもんね」
宮本さんの言葉に私は目が覚めるよな思いに駆られた。
「知っていたの・・・」
「多分、皆知ってるよ。天も知ってたでしょ?」
「当たり前ですわ。わたくしは先生に聞いていたのですが」
「何それ。茜は、噂で知ったんだけど」
「何で、黙っていたの」
私の率直な疑問に、矢車さんはため息をついた後、静かに話し始めた。
「それを話しても、良い解決にはなりませんわ。それを一番理解しているのは、羽月さんでしょ?」
皆が私に気を遣っている。皆の優しさが胸に沁みた。
だからこそ、甘えてはいけない気がした。
「それにしても、晴那のアレは置いておくとして、間宮さんは何故、あのようなお言葉を仰ったのかしら?」
「茜に聴いても、分かんないよ。それこそ、間宮さんのみぞ知るなんじゃね?」
「あなたには聞いていませんわ、茜」
「うっざ」
「同じ小学校だけど、よく分からないのが、本当。間宮さんはあんな人じゃなかった気がするけれど」
本音を言えば、私は間宮さんのこと、何も知らないのが、本音だった。
「ねぇ、最近、晴那と話してる?」
「いいえ」
「平気ですの?」
「何が?」
「いいえ、ただ、最近の羽月さんは、その・・・」
「何?」
「何処か、暗い表情を浮かべていると言うか・・・」
「私が?」
「ちょっと、天」
「私は元気よ。いつもと変わらない」
そう、私は元気だ。暁が居なくても、それは変わらない。
そう、彼女が居なくても、私はもう大丈夫、大丈夫なはずだ・・・。
「Sorry for the wait」 (おまたせ)
ブロンドが、矢車さんたちの下に駆け寄って来た。
彼女は、私に視線を合わせない。
どうやら、私は彼女に嫌われているらしい。或いはどうでもいいのか。
「妃夜!」
「そろそろ、授業始まるよ」
どうして、こうも素直に言葉を返すことが出来ないのだろうか。
気丈に振舞っている彼女に冷たく接することしか出来ない私は私が嫌いになりそうだった。
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