第5話ー⑥「魔法」

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 その後、私と暁はそれと言って、内容の無い話をした。 

 最近の練習がきついこと、宿題のこと、自由研究をどうするべきかについて等、様々だった。 私は聴くばかりで、暁に引っ張られてばかりだった。 

 気付けば、夕方になっていて、そろそろ、行かなきゃと言う時間帯になって来た。


 「そろそろ、行きますか。」


 「私、もう、疲れた。家で花火見ましょう」


 「インドアの癖に、よく夏祭りに行くなんて言ったね」


 「そうね。何でだろう、悔しかったからかな?私の友達、馬鹿にされて」


 ん?と不審そうな顔で見つめる暁に、私はいつの間にか、本音を曝け出していた。


 「な、何でもない。そろそろ、行きましょうか」


 「おぉぉぉい、晴那ぁぁぁぁ」


 いきなり、長身体躯のスタイル抜群なのに、ぼさぼさ髪のスウェットというアンバランスな格好の女性が欠伸をしながら、現れた。


 「かーちゃん、起きるの遅いよ。もう、4時だよ、4時」


 「いいだろ、別によぉ、アタシが寝てようが。今日はデリバリーね」


 「あたし、この子と夏祭り。って言うか、お客さん来るって、言ったよね?」


 「ど、どうも」 

 見たことのない女性に私はもぞもぞと体を揺らしてしまっていた。


 「あら、可愛い子。晴那のお友達にしては、珍しいタイプだね」


 「そ、そうかな?」


 「あー、この子が妃夜ちゃん。何、可愛いんだけど、ねぇ、飴ちゃん舐める」


 「やめろ、関西人でもないのに、関西のおばちゃんみたいなノリ」


 「えぇー、だって、こんなインテリ超清楚眼鏡外したら、絶対可愛い女の子とお友達になりたいじゃあん」


 ヤバい、この人、暁の母親だ。その上、クセが強すぎる。 

 このままだと、この人と家で過ごすのは、苦痛だ。


 「いくよ、妃夜。この人といたら、夏祭り終わっちゃう」


 暁は私の手を握り、私を引っ張るように、外へ連れ出した。


 「じゃあね~、妃夜ちゃん!バカ娘を宜しくねぇ~」


 私と暁は玄関で草履と下駄に履き替えた。


 「いいの、お母さんにあんなぞんざいな」


 「いいんです。かーちゃんに一度絡まれたら、最後なんだから」


 それをあんたが言うのも、何だか、おかしな話だが。


 「あっ、そうだ。ねぇー、焼き鳥とビールと焼きいかと焼きそばとあと」


 「行ってきます」 

 暁に連れられ、私は暁家の扉を閉めた。


 「あいつ、金持ってるのかね。まぁ、いいか」

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