第5話ー④「魔法」
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PM4:19 ピンポーンと甲高いチャイムの音が聴こえて来た。
「な、なに?」
ベッドから、起き上がり、私はそのまま、二階から、降りて、部屋を出て行った。
インターホンの画面を確認するとそこには、暁と宮本さんが映り込んでいた。 私は扉を開けた。
「お邪魔します」 「ど、どうも・・・」
気まずそうな2人に、私は困惑を隠せなかった。
「なんで?」
「いや、体操服返しに」
「どんな家か、気になって」
「あっ、洗濯したままだった。ごめん、ずっと、寝てて」
頭が回っていない私はどうも、テンパっていた。
「いいって。こっちは好きで来たんだから」
暁は私の体操服を渡した。
「どうも」
短い言葉で受け取り、私は正門の扉を締めようとした時だった。
「何で、閉めようとすんのさ」
暁のツッコミに、私は正門の扉を再び開けた。
「晴那、近所迷惑だろうが」
「ごめん、つい」
「それに、お邪魔しますじゃねぇだろ」
「そうだけど」
「ごめん、今日はありがとう。2人とも、わざわざ来てくれて」
私は正門の扉を再び、閉めようとした瞬間、暁は私に声を掛けた。
「夏祭り、2人で出かけない。やっぱり?」
私は再度、扉を開けた。
「それを言う為に?」
「言ったでしょ。あたしは直接じゃないと話し出来ないって」
「いや、それは・・・」
「返事待ってるから。じゃあね!」
暁は走って、自転車の方に向かって行った。
「おい、晴那」
嵐のような出来事に、ようやく、頭に血が上り始めた私は状況を飲み込めてきた。
「ごめんね、羽月さん。迷惑で」
「そんなことは」
「あと、さっきの嘘憑かせてごめんね」
さっき?と疑問符が浮かんだが、あの時の話だろう。
「いや、いいって、そんな」
「他にも、隠してることがあるんでしょ?」
核心を突かれ、私は言葉に詰まってしまった。
「言わなくても、分かるよ。あいつ、顔に出やすいし、それは羽月さんも同じ」
「そ、それは・・・」
宮本さんには、ちゃんと話すべきなのだろうか。彼女にならと思ったが、口がそれを拒んでいた。
「言わなくていいよ。茜もこれ以上は詮索しない。ただ、これだけは信じて」
宮本さんは、自身の手で私の両手を掴んだ。
「晴那を信じてあげて」
いつもの嫌悪感と生ぬるいぬくもりに、私の体は硬直した。
両手を放し、じゃあねと暁を追いかけていった彼女を背に、私は扉を閉じた。
その瞬間、倒れ込むまいと自制し、私は我慢しようとした。
その時だった。私の頭に暁が浮かんできた。
彼女の顔が浮かび、先ほどまでの嫌悪感が少しばかり、楽になっている気がした。
「妃夜、平気なの?」
そう言って来たのは、白夜姉さんだった。
「へいき・・・」
「顔がやつれているわよ」
「少し疲れただけ」
私は玄関を後にして、自室に戻ることにした。
「なんで、妃夜にそんなことするのかしら。許せないわ」
姉さんの言葉は何処か、鋭く突き刺さていた。 それもこれも、私が誰にも言ってないからであって、宮本さんは何も悪くない。
彼女の真心を無碍には出来なかった。
「あんな子、お友達になるべきではないと思うわ。もっと、いい子が」
「その通りだと思います。姉さんの言う通りです」
私の意志と矛盾するように、白夜姉さんにどうして、こんな言葉を投げかけていたか。
私は無言で二階の自室に戻り、部屋のベッドで横たわろうとした時、私は近くのスマホに向かい、電話を掛けた。
「暁、一緒に夏祭り行こう。2人だけで」
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