第5話ー②「魔法」
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AМ9:20
全員の食事が終わり、私はそろそろ、帰りたいと思った。
流石に、暁の体操服のままも、気まずい上に、シャワーを浴びたいと思った。
他人の況してや、暁の家のシャワーを借りるのは、何とも言えない気持ちが強い。
「妃夜、そろそろ、帰る?」
暁は、食器を手で洗い始めながら、私に話しかけていた。
「いや、体操服はどうするのよ?」
「うーん。乾いたら、あたしが届けるよ。これなら、いいでしょ?」
イイワケないだろと思ったが、これ以上に良い選択は考えられなかった。
「まぁいいわ。そろそろ、お暇させて頂きます」
「いや、シャワー浴びたら、よくね?朱音も入りたいし」
場が一瞬凍った。宮本さんンンンン!
「いいじゃん。朱音もベッタベタだし、それに、羽月さんもそんな体操服嫌っしょ?」
「そ、そうだけど・・・。宮本さん、服はどうするの?」
「うーん、晴那の服借りる。サイズは大きいけど、洗濯すれば行けるっしょ」
「そ、そうですか。じゃあ、私はそろそろ、帰らせて」
席から立ち上がり、宮本さんは立ち上がろうとした。 それが分かってか、後ろで洗い物をしていた暁も洗い物をやめ、泡がついたままの手で、宮本さんを静止した。
「茜!ストップ、ストップ!」
「どうしたん、晴那」
暁の私への配慮に対し、宮本さんは怪訝そうな表情で見つめて来た。
「妃夜の体操服はあたしが届けるから。それに妃夜は、あれなんだ」
「あれって?」
「女の子の裸で興奮するんだよ。そう、ね?」
「え、う、ううん」
変な誤解生むような発言はやめろと内心、冷や冷やしたが、裸を見ると気分を害する私にとって、これ以上ないパスに私は黙っていた。
「そ、そうなんだ。そういえば、水泳の授業の時、遅れて来てたような?興奮してたからなんだ。ふーん。」
「あたし、茜と一緒にシャワー浴びたいな。どう?そうしようか」
2人の仲好さげな行動に、私は心が痛かった。
私が普通だったら、みんなでお風呂に入っていただろうに。
「そろそろ、私帰りますね。お邪魔しました」
「待って、羽月さん」
席を立ち上がろうとした私を引き留めたのは、他でもない宮本さんだった。
「何か、ごめんね。その・・・。羽月さんはやっぱり、女の子が・・・」
「あははは」
何だろう。突っ込む元気すら、無くなって来た。
「今日は遊べて、嬉しかった。またね」
「う、うん」
私は席を外し、暁の体操服を着たまま、家を後にして、玄関口まで、出ようとした時だった。
「妃夜、ごめんね」
その声は紛れもなく、暁の声だった。
「いいって。他に選択肢も無かったわけだし」
「また、体操服持ってくるね。今日中に」
「いいって、学校が始まったらで」
「それじゃあ、あたしの気が休まらないの。妃夜はそうやって、いつも、逃げ道作るんだから」
「そうだけど・・・」
「それに、夏祭り、どうするか決めてないよ」
「そんなことも言ってたね」
「あたし、これから、めっちゃ忙しいの。遊べる時間も無い位、部活ばっかなの」
「そ、そうだけど・・・」
どう返しても、私は完全に八方ふさがりだ。人気者の暁と2人で夏祭りというのは、誤解しか生まない気がしてならない。
「まぁ、いいや。今日はありがとね。体操服はいつでもいいから」
「う、うん・・・」
「じゃあね」
「うん・・・」
私は暁の家を後にすることにした。 走る前より、気まずい気持ちを抱えたまま。
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