第2話ー③ 「どうにかなるさ」

それから、二日掛けて、暁は全てのノートを書き終え、テスト勉強に励んでいた。 数学だけに限れば、基礎が出来てなかったので、その部分を補いながら、私と暁は図書室でテスト勉強を行っていた。


 「とりあえず、連立方程式やBe動詞の過去形は覚えたわね」


 「頭がパンクしそう・・・・」


 「パンクする位が丁度いいわ。後はそれをちゃんと活かせるようにしなきゃね」


 「一つ聴いても良い?」 


 「何よ?」


 「何で、羽月は頑張れるの?」


 「私にはこれしかないから」


 「本当に?」


 一体、何を言いだしたかと思ったが、この女は変に勘が良い。 

 正直な所、これ以上話しても、何の意味も無いことは明白だ。


 「関係無い話をする位なら、私は帰るわ。残りの時間は頑張ってね」


 席を立ちあがり、図書室を後にしようとする私を彼女は瞬間移動でもしたように、先回りして、体で私の通行を妨害していた。


 「あたし1人で勉強できると思う?」


 「思う、思います。貴女ならできます。必ず出来ます、ですから」


 「最後まで付き合ってくれるって、言ったよね?」


 「そんなことは一ミリも言ってない」


 「責任取ってよね」


 「何の責任?」


 「私と一緒に勉強すると言った責任」


 「嫌と言ったら?」


 「あたしが両親に怒られ、監督に怒られる。そうなった、責任は全部」


 「あんたの努力不足でしょうが。私1人に責任転嫁やめろ」


 「えぇー、だったら、どうすんの?」


 「知らない。勉強は何処まで行っても、反復と反復。後はやる気だけ。分からなかったら、連絡して」


 暁はにやりと私に不気味な笑みを浮かべた。


 「連絡先、シラナイ。オシエテクレルノ?」


 しまった、この段階でそれを教える気はさらさらなかったのに。 

 こいつに連絡先を教える羽目になるなんて。


 「じゃ、じゃあ、私家に行くわ」


 「じゃあ、連絡先教えてよ。時間分からないと不便じゃない?」


 完全に地雷を踏んでしまった慙愧の念に堪えない。 

 完全にやらかしてしまった。どうしよう、本当にどうしよう。


 「そ、そうだ。用事が」


 「テスト期間だよ?」


 頭が回らない、どうしたもんか?ハッキリ言って、連絡先を言わなきゃ。 

 それなのに、頭から出て来るのは、嘘ばかり。私って、こんなにも。


 「羽月、言いたくないなら、言わなくていいけどさ。言いたいなら、ハッキリ言って。そうじゃないと誰にも伝わらないよ」


 暁の言葉は正しかった。私はまだ勇気が足りないのだ。 

 暁晴那のやる気で変化すると思っていたはずなのに。 今の私は人と関わらないと決めた私のままだった。


 「ごめんなさい。今は無理。私、ごめんなさい」


 私はいつの間にか、図書室を猛ダッシュで駆け抜けていた。


 彼女は追いかけて来ることは無かった。

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