夢と絶望の真ん中を

羽入 満月

夢と絶望の真ん中を

 小さい頃、誕生日のたびに聞かれた言葉。


「大きくなったらなにになりたい?」


 子どもながらに考えた答えは?


「お花やさん」や「ケーキ屋さん」


 小さい子がよく答えるやつ。

 キラキラの夢がいっぱい詰まった宝箱。


 きっと男の子らな、「パトカーになりたい」とか「きりんになりたい」って答えるやつ。

 斜め上の答えでも大人は微笑ましく見つめながら、「なれるといいね」って認めてくれる。


 もう少し大きくなると、「職業」として、実際になれるかどうかの答えになるね。


 医者や弁護士になるためには頭がよくなくてはダメ。

 警察官や消防士だったら、体力もいるよね。

 漠然とではあっても、それくらいわかるようになる。

 それでも、あれになりたい、これになりたいと夢をもって、それに向かって努力をしようとはできる。


 それからまた、少し時が進むと足の引っ張りあいが始まる。


 そこからは地獄。

 なりたいかどうかではなく、なれるかどうか。

 私の意見は聞いてない。

 他人の評価という名の心情で決まるもの。


「あんたになれるわけがない!ムリに決まってる」


 そう同級生にバカにされてやる気を削がれて辱しめられて。

 そのうち、本当に自分には無理なんだなぁと諦る。



 結局、最初になりたかったものなんて忘れて、無難な選択肢を選ぶのだ。



「手に職があった方がいい」

 そう言われてしまったら、反論できるわけがない。

 本当になりたかった、やりたかったものは、趣味程度にしておいたほうがいい、と。


 それなのに。


 幾ばくかたってから言われる言葉の数々。


「やめたい」といえば、

「すぐやめるかと思ってた」と言われる。

 貴女が進めた職業で資格までとって就職したのに?


 趣味として楽しんでいれば、

「それ、公の場に出さないの?」


 専門学校に行きたいと言ったとき、役に立つ学校にしておきなさいと言った貴方がそれを言うの?


 上は、いい大学に入って中退し、下は大好きなゲームがやりたいと専門学校にいったのに。


 私だけ、自分の理想とは全く違う学校を卒業後、学んだ知識を生かして就職しているに。


 二人には言わないの?

 確かに親からすれば、成功したのは私だけかもしれない。


 でも。

 私からすれば、私だけ、夢を始めから追わせてもらってない。

 何もかもがだめ、駄目、ダメ。


「あなたの事を想って」


 そう言って。


 じゃあ、反抗すればよかったのかと言われても……

 諦めたよ、もうすでに。

 だって応援してくれる人はいない、認めてくれる人もいない、それなのに蔑んで、貶めて、悪口を言って来る人は周りにたくさんいた。

 何を言っても否定して聞き入れる気はなかったでしょう?

 そんな中で生きていれば、無難に生きるのが正解になるでしょう?


 小さい頃に見た夢は、幻だったかもしれないけれど、幻すらも追えないように潰されて、潰した本人たちがまた夢を追えばいいと言ってくる。


 夢に希望を持つほど純粋ではなくなったし、夢に向かってひた走れるほどの情熱すら持ち合わせていない。


 今になってそんなこと言われても。

 もう、大人になっちゃったよ。

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