『妖怪屋敷』 5


はぎはらたまのじょう


 『あなたは、どなたですか?』



妖怪きんひめ


 『わたくしは、きんひめ。』



たまのじょう


 『きんさんですか。』



きんひめ


 『そうよぶなら、おきんひめ、にしてください。』



たまのじょう


 『では、おきんひめさん。わたしは、公務中です。邪魔しないでいただきたい。』



おきんひめ


 『ほう。黄金を無視するか?』



たまのじょう


 『興味ありませんな。』



おきんひめ


 『もったいないことですよ。ここでは、だれも見ていない。多少、ポケットに入れても、バチは当たらないものを。』



たまのじょう


 『それは、汚職に当たります。パス。』



きんひめ


 『まあ、おかたい方。カチカチね。はぎはらかちかちのじょうさんね。』



たまのじょう


 『それで、けっこう。』



きんひめ


 『では、強制的に差し上げましょう。はい!』



 すると、金貨たちは、たまのじょう目掛けて、大挙して押し寄せたのである。


 そうして、ポケットはおろか、口からも鼻からも耳からも、身体中に、ねじ込み、入り込もうとする。



きんひめ


 『ほほほほほ。それが、1枚でも体内に入ると、金貨人間となり、わらわの僕となるのじゃ。』


 

たまのじょう


 『おろかなり!』



 ああ、しかし、金貨の力は思ったよりも、遥かに強かったのだ。


 たまのじょうの身体にねじ込んでくるわくるわ。


 たまのじょう、危うし!



     🥇



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る