『妖怪屋敷』 4


 はぎはらたまのじょうは、2階に上がった。


 昔の映画に出てくるような、大きな吹き抜けの階段だが、一部は崩壊している。


 『いや、まさしく、つわものどものゆめのあと、ですかなあ。』


 しかし、幸いなことに、ここには、あのあらゆる感情が不満げに、ブクブクのたくっているような落書きが、ほとんど見当たらない。


 それは、不思議ではあった。


 『外部には、たくさんの、廃墟マニアが訪れた形跡が残されてはいるが、内部に落書きがないというのは、不可思議ではあります。………全てではなく、プロ意識のあるマニアもあるが、彼らは形跡は残さないものだ。残さない形跡は、残らない。』


 はぎはらたまのじょうには、独り言をする癖があり、それは、危険でもあった。


 まあ、性分だから、いたしかたない部分はある。


 階段を登りきったあたりで、不測の事態が起こったのである。


 天から、大量の煌めくような金貨が降ってきたのだ。

 

 『わあ。』


 はぎはらたまのじょうは、ちいさくうめいた。


 『不思議が池の幸子さんは、お饅頭嵐を降らせるが、これは、金貨あらしかあ。』


 『あらしてよろしいのですよ。』


 なまめかしい、女の声がした。


 『はあ、どなたですか? なんか、ようかい。』


 はぎはらたまのじょうは、冷静に、そう、言ったのである。



      🐷ナニカ?






 

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