第6話
ヨガ教室のレッスンが終わり、真紀は心地よい疲れを感じながら教室を後にした。美咲と共に近くのカフェでお茶をしながら、日常のことや、これからの計画について話し合った。彼女たちの会話は穏やかで、真紀の心にも久しぶりに安らぎが広がっていた。
「今夜は星がきれいだね」と美咲が言った。
「ええ、本当にそうね。こんな夜が続けばいいのに」と真紀は微笑みながら答えた。
彼女たちは互いに励まし合い、支え合うことで、心の平穏を見つけつつあった。しかし、その静かな夜は、何か不穏な予感を含んでいたのかもしれない。
カフェでの時間を過ごした後、真紀は家に帰ることにした。自宅に戻り、玄関を開けると、そこには清志との思い出が詰まった空間が広がっていた。彼の写真が飾られたリビングに足を踏み入れると、真紀は深い呼吸をして心を落ち着けた。
「ただいま、清志。今日はいい日だったわ」と、彼の写真に向かって静かに語りかけた。
真紀はお茶を入れ、ソファに腰掛けながら静かな時間を楽しんだ。ヨガ教室でのレッスンや、美咲との会話が彼女の心に温かい余韻を残していた。
その夜、真紀は寝室に向かう前に、もう一度瞑想をすることにした。ヨガ教室で学んだ瞑想の技術を使い、心を静かにし、内面と向き合う時間を作ることが彼女の日課となっていた。
瞑想の中で、真紀は再びガンジス川の静かな流れを思い出し、その静けさに心を委ねた。清志との思い出が彼女の心に浮かび上がり、彼との対話が続いた。
「清志、あなたのことを忘れないわ。でも、私は前に進まなければならない。」
その言葉を心の中で反芻しながら、真紀は深い安らぎを感じていた。しかし、その静かな瞬間は、突然の異変によって中断された。
真紀の心臓に鋭い痛みが走り、彼女は苦しげに息を吸った。全身がしびれ、呼吸が困難になっていく。彼女はソファに倒れ込み、必死に手を伸ばしたが、何も掴むことができなかった。
真紀の意識が遠のく中、彼女は最後の力を振り絞って清志の写真を見つめた。その写真に映る彼の微笑みが、彼女に安らぎと愛を与えてくれるように感じた。
「清志…」彼女の唇が最後に動いた。
その瞬間、真紀の意識は完全に途切れた。彼女の体は静かに横たわり、部屋には深い静寂が広がった。
翌朝、ヨガ教室の仲間たちは、真紀がレッスンに来ないことに気付き、心配して彼女の家を訪れた。彼女の家のドアが開かれ、リビングに入ったとき、彼らはそこで安らかに眠るように横たわる真紀を見つけた。
真紀の死は、彼女の周囲に深い悲しみをもたらした。しかし、その悲しみの中には、彼女がガンジス川で見つけた再生の希望と平穏が静かに輝いていた。
葬儀の日、美咲は真紀のために祈りを捧げた。彼女の心には、真紀が最後に見せた安らぎの微笑みが残っていた。
「真紀、あなたのことを忘れない。あなたが見つけた再生の希望を、私たちも受け継いでいくわ。」
ガンジス川の流れと共に、真紀の魂もまた再生の旅を続けていると信じながら、彼女の友人たちはその思いを胸に刻んだ。
真紀の旅は終わりを迎えたが、彼女が残した再生の希望と愛は、彼女を知る全ての人々の心に深く刻まれ続けたのであった。
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