第2話 魔力ゼロ②

俺は、このロトという男に地球の話をし、逆にこの世界のことを聞いた。

転生者がいるというのはこの世界では誰もが知っている。だから隠す必要は無いらしい。

そしてやはり魔法があるということ

地球の知識を売りにして生活はできるということ

そして冒険者がいて魔物がいるということ

街には冒険者ギルドがあるということ

ちなみにロトは商人で転生者ではないということ

を話しているうちに町に着いた。


町というより街だ。わりと大きい。門番らしき人の近くに看板があるが読めない。

〇〇『なんて書いてあるんだ。』

ロト『読めないのか。”クヴァ―ラ”と読む。転生者は転生する際に読み書きができるようになると聞いていたが…。』

〇〇【原因は、あの女神か!】

〇〇『まあ、読み書きは勉強するよ。とりあえず、冒険者ギルドに行ってみたいけど、えーとどこかな。』

ビリー『ここから見えるあの建物だ。ギルドは目立たないといけないからどの町のギルドも出入口から見えるようになってる。』

〇〇『ありがとうございます。助かりました。行ってみます。』

ロト『そう言えば、名前は?』

〇〇『名前?あ~そうか。田村…せっかくだから田…デン…おデン。おでんだ。』

ロト『おでんさんか。これも何かの縁だ。困ったことがあったら力になりますよ。』

おでん『気持ちだけで十分です。ありがとうございました。』


冒険者ギルド

おでん『えーと、受付はと。あの綺麗な女の人がいかにも受付嬢みたいだな。』

おでん『冒険者になりたいのですが。』

受付『(ずいぶん、老けた冒険者希望ね)分かりました。試験を受けていただきますので、試験料として銀貨3枚とこの用紙に必要事項をご記入くださいって、何を驚いてるんですか?』

おでん『お金…無いです。字…読めません、書けません。』

受付『………そうなると試験を受けることすら出来ませんが…?そういうことを知らないなんて。まさかと思いますがもしかして転生者でしょうか?』

おでん『えっ。はい、出来立てほやほやの転生者です。』

受付『ほやほや?転生語ですか。転生者は特採になるので無料で試験を受けることができます。でも読み書きができないなんておかしいですね。まあ、とりあえずこちらへ。』

『転生者だと。』という声が聞こえて振り返った。どうも他の冒険者に聞こえたらしい。

おでん『あれ?売り切れなのか。』と隣のカウンターのメニュー表を指した。

受付『何か?あそこは酒場です。食事もできます。人気は』

受付&おでん『玉子サンド。』

受付『正解。よく分かりましたね。』

おでん『絵が分かりやすかったので。売り切れかあ。』

受付『売ってますよ。ほら。』

玉子サンドを買う冒険者がいた。

おでん『あれ?なんか四人組が買おうとしたら売り切れだったような。』

受付『四人組?いませんよ。』

おでん『気のせいか。』

受付『こっちですよ。』


案内されたところに水晶のようなものがあった。

受付『転生者です。お願いしますね。』

判定者『ほお~。久しぶりの転生者か。では魔力を測定するからこの水晶に手を乗せるんだ。』

おでん『おっ、魔力とはますます異世界らしい。さあ、どうだ。』と手を乗せた。

判定者『………ん?転生者ですよね。魔力無しとは、おかしいですね。転生者で魔力が無いというのは聞いたことがないですが…まあ、何事にも例外はありますから、残念ですね。まあ、武術の才能がある人もいますので実技試験を受けてみますか。』

おでん『もちろん、受けます。しかし、読み書きに続いて、魔力無しだなんて、俺何かしたかなあ………あっ!思いっきり何かをしたわ。』


しばらくして酒場にて

『玉子サンドは売り切れですね。』

『残念。遅かったか。』と4人組の冒険者がいた。


ギルドの地下訓練場

試験官『さて、ここに集まったのは魔力の無い云わば無能者だ。魔力があれば固有スキルを発動させることができたり、魔法を覚えたりできるが、魔力が無ければそれもできない。それでも冒険者になりたいなら己の強さを誇示しろ。俺は、C級だから俺に勝てとは言わない。負けても見込みがあれば合格できるかもしれないぞ。』

試験官『さて、誰から受けたいか。無ければ適当に選ぶぞ。』

試験官は、受験者リストを見て『ほお。よし、おでん。お前から来い。』

おでんは【やっぱり】と思った。【きっとリストには転生者と書いてあるんだろう。】

おでん『お願いします。武器は?』

試験官『自前が無ければそこにある好きなものを使え。』

おでんは武器を選別しながら『そっちは木刀?こっちは真剣でもいいのか』と言いながら剣を選んでいた。

試験官『木刀はハンデだ。準備はいいか。』

結局、おでんは、木刀を選んで向き合った。

試験官【木刀か。完全に素人の構えだな。ハズレ転生者か。】

試験官『先手を譲ってやろう。来い。』

おでんは戸惑っていた。向き合った瞬間に、試験官が向かってくるのが見えた。そしてそれを躱す自分も。

試験官『来ないのか。それならこっちから行くぞ。』そう言うと瞬時に間を詰め、木刀を振った。脇腹に当てて終了のつもりだったのだが、躱された。驚いたが、そこはC級。流れるように次の一手、二手、三手、だが全て躱された。

試験官【見た目に騙された。魔力は無いが力はありそうだ。もう少しレベルを上げて試すか。】

おでん【デジャブか。なんだ、同じ動きをするから躱せた。次は、どうなる?】そう考えるとまた見えた。今度は最後には躱せない自分を見た。

試験官がさっきとは比べ物にならないスピードで攻撃してきた。振った剣の音からパワーアップしているのも感じた。おでんは躱しながら試験官の背後に回った。だが攻撃せずに剣を縦にした。そこに渾身の剣が振られおでんは吹っ飛んだ。だが、倒れなかった。が剣を落とした。

おでん『痛~。痺れた~。』

試験官『はあ~。今のを受け止めるのか。文句なしの合格だ。』

おでん『えっ!やったー!』

結局、この試験で合格したのはおでんだけだった。


受付『おめでとうございます。魔力が無いということを聞いていましたが、合格するなんてさすが転生者ですね。これが冒険者カードです。無くさないようにしてくださいね。』

おでん『試験に落ちたら路頭に迷うところだった。』

受付『そんなことはないですよ。冒険者にならなくても生活できますよ。例えば、外に出ればクレープ屋さんやたこ焼き屋さんがあります。これは転生者がいた世界のものを再現されたと言われています。だからおでんさんなら得意でしょ?』

おでん『(何気に日本の屋台文化が浸透してるな)得意ではないかな。ところで文無しだからお金を稼がないと。さっそく依頼を受けたいけど字が読めないからどれがいいのかな。』

受付『最初は、オーソドックスな薬草集めですかね。たまにスライムが出ますけど、試験に合格されてるから大丈夫でしょう。』

おでん『素手でも勝てるかな。』

受付『えっと、ナイフも無い?』

おでん『ナイフもナイ(フ)って。』

受付『?』

おでん『………。』

試験官『武器も持たずか。使い古しだけどこれをやるよ。無いよりましだ。』と銅の剣をくれた。


“おでんは、銅の剣を装備した”


おでん『いいんですか?おお~。剣士みたいだ。よし、行ってくる。』と出入口に向かったと思ったら戻ってきた。

おでん『薬草ってどんな草?どこに行けばいい?』

受付&試験官『………(大丈夫か?)。』



おでん『この辺りかな。随分ジメジメしてるなあ。さて、試してみるか。』目を閉じて集中する。数秒後

おでん『やっぱり、俺は未来が分かるスキル持ちだな。しかも魔力ゼロで使えるということは使いたい放題じゃないか!』両手を合わせて【女神様、ごめんなさい。素晴らしいスキルをありがとう】

おでん『えーと、見えた未来は…と。薬草を採ってると狼が三匹襲ってくるんだよな。それを剣で撃退する、という筋書きだったな。待てよ、左足嚙まれてたぞ。』左足をじーっと見て、周りを散策する。

おでん『これ以外何もないな。鉄板とかあれば良かったけど、無いよりはマシか。』とズボンの下に板切れを挟んだ。

おでん『さて、薬草採取だ。』なぜか銅の剣を鞘から取り出し剣先を左脇に挟んで草を摘み始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る