第1話 魔力ゼロ①

〇〇『ここはどこだ?』

女神『ここは死後の世界です。あなたは事故で無くなったのです。』

〇〇『えっ?……あ~、思い出した。女の人を助けようとして代わりに死んでしまったのか?女の人がここにいないということは助かったのか。ということは俺は人助けで死んだのか~。ちょっと格好いいかも。』

女神『………。』

〇〇『なぜに黙ってる?』

女神『正直に言いますと、あなたが助けようとした女性は、あなたの隣にいた人が助けて誰も死なないはずだったのです。』

〇〇『えっ?ということは無駄死に?』

女神『そうですね。オブラートに包んで言えば“無駄死に”ですね。』

〇〇『それは包んでませんよね。それなら俺を生き返らせてもらえるんですか。』

女神『事故であなたの身体は、ぐちゃぐちゃのモザイクレベルになってしまったのでもう無理ですね。』

〇〇『…さっきから棘のある言い方なんですが、俺何かしました?』

女神『特に。ただ、予定外の死亡者なので迷惑というか処理が面倒くさいというか。』

〇〇『ごめんなさいね!お手を煩わせてしまって。どうでもいいから、さっさとその処理をしてくれ。死んだからどうでもいいや。』

女神『えーと、本来なら生きていたときに積んだ徳レベルで魂を浄化して輪廻転生してもらうのですが、予定外ですし、無駄死になのですが一応人助けをしましたので複雑なんです。それに浄化システムがメンテナンス中で…。』

〇〇『何、そのくそシステムは。』

女神『言っておきますがあなたは予定外の無駄死に者なのです。今日はこの境界に死者が来ることはないのでメンテナンス日にしていたんです。分かりましたか!それにシステムはとても優秀です。』

〇〇『分かりましたよ。じゃあ、メンテナンスが終わるまで待ちますよ。』

女神『その前にあなたの魂が消えますけどいいですか。』

〇〇『?浄化と消えるは同義語?』

女神『違います。浄化は輪廻転生、消滅は文字通り消えます。もう存在しません。』

〇〇『ふーん、どうせ死んでるんから消滅しても変わらんか。』

女神『…そっ、そうですね。じゃあ、消滅するまでその辺で休んでいてください。』

〇〇『……ねえ、何か隠してない?一瞬、言葉に詰まったよね。消滅はマズいの?』

女神『まあ、人それぞれですかね。消滅した魂とのコンタクトはできませんからよく分かりません。神様曰く、無になるらしいのですが。』

〇〇『……やっぱりその素晴らしいシステムをなんとか動かしましょう。』

女神『それは無理ですね。再構築中ですから動きません。』

〇〇『なんとかしてください。無になりたくないです。そうだ。どんなときにも必ず対策はあるはずです。ISO認証は取ってないんですか。』

女神『そういう認証はありません。まあ、別の対応策と言えばいいのか、別の世界に転生するなら可能です。』

〇〇『それは、もしかして、いわゆる異世界転生!OK!OK!でどんなチートスキルが貰えるのかな。』

女神『…せん。』

〇〇『えっ?』

女神『ありません。』

〇〇『はあっ?なんだって?』

女神『スキルはありません。そもそも予定外と言ったでしょ。あなたにあげるようなスキルは現在余っていません。』

〇〇『余る余らないとかわけ分らん。女神ですよね。なにかあるでしょ。不老不死とか、女の子にモテるとか…何もなかったら異世界転生楽しめないじゃん。』

女神『ちょっと、近寄らないで。』

〇〇『お願いします。』と土下座してみた。そして見上げると女神のドレス?ワンピース?の裾の中が見えた。

女神『土下座されても困ります。』

〇〇『ノーパン。』

女神『えっ………。』徐々に顔が赤くなった。

〇〇『そしてパイパン。』

女神『キャー!スケベ!離れて!もう転生しなさい。キック、キック、キ~ック!』と蹴りを入れながらゲートを開いた。

〇〇『痛い、痛い。余計に見えますよ。それよりもスキルをください。すぐに死んでしまう。』蹴りを受けながら必死だった。

女神『それよりもですって。私の大事なところをそれ扱い!もう死ね!』と近くにあった黒色の石のようなものを投げつけた。それは俺の額に当たり、一瞬意識が飛んで異世界に飛ばされたのだった。


神様『うるさいぞ。何を騒いでおる?』

女神『申し訳ございません。ちょっと手違いで死んだものを別の世界に転生させたところです。』

神様『そうか。ん?ところでここにあったスキル石はどうした?』

女神『スキル石?』

神様『あ~、すまんすまん。言ってなかったか。お試しに新しいスキルを作っておってな。まだ未完成だから適当な石にスキルコードを記憶させておいたんじゃ。分かるように黒石にしたのだが、どこかに転げ落ちたのかな。』

女神『もしかしてこれっくらいの大きさでしたか?』と手で大きさを示した。

神様『そうじゃ。』

女神『先ほどの転生者に投げつけてしまいました。もしかしたら…付与されたかも。』

神様『何と!…まっ、仕方がない。その者にそのスキルの実験台になってもらおうかの。』

女神『あらっ、その~、言いにくいのですが。』

神様『なんだ?』

女神『魔力設定をせずに送り出してしまいました。』

神様『なんと、魔力ゼロか。それではスキルが使えないのか。…まっ、仕方がない。それならすぐに死んで戻ってくるだろう。そのスキルとともに。お前がそんなミスをするとは、余程手を焼かすような者だったのだな。』

女神『………はい。』考えただけで顔が赤くなった。


気を失っている男が目覚めた。

〇〇『ここは?はっ。異世界か。転生したのか。……そうだ、定番のステータスオープン………?あれ?何も起こらない。じゃあ、ウインドウオープン…ダメか。そうだファイヤー!ウォーター!サンダー!アイス!…ダメだ。いや、そもそも魔法が無いの世界か。じゃあ、剣技メタル切り~!………何も変わらんな。』

〇〇『え~。本当にスキルないのか?というかお金も武器も何もないぞ。どうやって生きていけばいいんだ?』

しばらく考えていたが、

〇〇『ダメだ。何も思いつかない。いや、こういうときこそポジティブだ。犬も歩けば棒に当たるだ。』

しばらく歩くと川があった。

〇〇『おっ、水だ。喉が渇いていたんだ。でもこの世界の川の水は飲めるのか。未知のウイルスとかいるんじゃないのか。いやいやいやもうどうでもいいよな。ゴクゴク、はあ。えっ!え~!前の世界の姿のまんまじゃん。ということは31歳なのか、俺。』水面に映った姿は、転生前の社畜時代の自分だった。

〇〇『あのくそ女神!……やばっ、パイパンを思い出したら鼻血が…。』

そのまま横になっていると、音が聞こえてきた。

起き上がると馬車が見えた。

〇〇『おーい。』と近づいていったら、護衛らしき男に剣を突きつけられた。

男『去れ、そうすれば命は助けてやる。』

〇〇『命は惜しいけど、去ったら去ったで命がないかも。…まあ、去りますけど、この近くに町か村があれば教えて欲しいんですけど。』

男『怪しいな。今去らないと斬るぞ。』

馬車内から『待ちなさい、ビリー。話を聞きましょう。困ってそうな声ですから。』

ビリー『ロト様…分かりました。』

〇〇『ロト?ドラ〇エの勇者みたいだな。』と呟いてしまった。

ロトと呼ばれた男が馬車の窓を開けて『ほお~。ドラ〇エを知ってるということは、もしかして地球というところからの転生者かな。』

〇〇『!地球を知ってるんですか。もしかしてあなたも転生者?』

ロト『その言い方だと、最近こちらの世界に来たと見ましたが。』

〇〇『今日?来たばかりで。』

ロト『そうか、そうか。町まで行きたいのならこの馬車に乗りなさい。せっかくなので地球の話を聞いてみたいですね。』

ビリー『転生したばかりか。まあそれなら仕方が無いか。』



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