チョコミント
ゆうべ、叔母から電話があった。風呂上がりのアイスを切らしていることに気が付いてコンビニまで歩く道すがら、スマートフォンが振動したのだ。出し抜けに叔母が言う。
「ねぇあなた、その家に住む?」
「え、僕が?」
「そうよ。家だっていつまでも空き家にしといちゃ良くないもの」
たしかに夏以外は空き家という事になる。不用心だし、管理面で言ったらそれは道理だけど。
「どうせ大学に残るんでしょう?」
「まぁ、そのつもりだけど」
象牙の塔というやつに籠るつもりではあるけれど。築四十年のこの家が居心地が悪いわけでもないけれど。やはり少しためらう気持ちがある。
「それとも、やっぱり更地にして売るべきかしら」
売る、という単語に頭を殴られたような気がした。
夜道に灯るように何かが落ちていて、近寄って見ると芙蓉の花がらだった。白くすぼんだ塊を、しゃがんで、まじまじと眺める。
「ちょっと、考えてみてよ」
訪れたコンビニで煌々とした店内のアイスのショーケースの前に立っても、僕の現実感は薄れたままで、あの家の事を考えてしまう。
ソーダ味と間違えて買ってしまったチョコミントのアイスバーはユリさんには好評で、意外な一面を見たなと思った。
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