第61話 たったひとつの方法
敵だと思い込んでいた自律型甲冑兵の手助けもあり、なんとか気を失った竜崎くんを外へ連れ出すことができた。
「ありがとう。君がいなかったらどうなっていたか」
礼を言うが、甲冑兵は何も反応を――いや、表情はないし言葉も話さないけど、きっと喜んでいるんだろうな。何となく伝わってきたよ。
「君は……これからどうする?」
今度は質問をしてみた。
やはり返事はないが、彼(でいいのかな?)は彼なりにやりたいことがあるようだ。
すると、甲冑兵に関心を抱いた精霊たちが集まってきた。
「あなたは人間?」
「でも硬そうだよ?」
「それになんだか角ばっているような?」
初めて目にする甲冑兵を前に興味津々の精霊たち。甲冑兵の方はというと、最初はなんだか戸惑っているように見えたが、肩や頭にとまって質問攻めする人懐っこい精霊たちを可愛いと思ったのか、振り払うようなマネもせず受け入れている。
「どうやら、心配はなさそうだな」
あの甲冑兵は精霊たちと仲良くやっていけそうだ。
かつては戦争の道具として使われるはずだったみたいだけど、今はもうそんな必要はないらしいからここでゆったりと余生を過ごしてほしい。
「あっ、でも、あの甲冑兵が量産される前に戦争は終結したんだっけか」
だとすれば、もともと彼は戦いに参加していないということになる――けど、精霊たちと仲良さそうにしている光景を目の当たりにしたら、そんなのはどうでもいいかって気持ちになるな。
――残る問題はこっちのみ。
相変わらず竜崎くんは目を覚まさない。それと、さっきは薄暗いダンジョン内だったから気づかなかったが、凄く汗をかいている。おまけに呼吸も乱れており、ここまでは風邪の諸症状とよく似ていた。
だが、それだけでは説明がつかないほど竜崎くんは弱っている。
明らかに尋常ではないのだ。
すぐにでもログハウスへ戻らなくてはいけないのだが、ここで新たな問題が。
「あっ……転移魔法……」
そう。
俺たちがこの魔境内を自由に行き来できていたのは竜崎くんの転移魔法があったから。
しかし今はその使い手である竜崎くん自身がダウンしてしまっている。
これではすぐにログハウスへ戻るどころか、そもそも帰還できるかどうかも怪しくなってきたぞ。
解決するための方法は――ただひとつ。
「俺が……転移魔法を使うしかない」
できるかできないかの問題じゃない。
ここで俺がやらなければ、竜崎くんを助けられないかもしれない。
「やるっきゃねぇよな」
覚悟は決まった。
魔鉱石の効果を引き出せたんだ。
きっとうまくいく。
いかせてみせる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます