第60話 竜崎救出作戦
原因はよく分からないけど、竜崎くんが戦闘不能状態になったというなら俺が代わりにあの自律型甲冑兵とやらと戦わなくちゃいけない。
「くっ……」
手持ちの武器はキャンプ用ナイフと熱を放つ魔鉱石。
……正直、どちらも有効な武器とは言えそうにない。
というか、あいつって何か弱点があるのか?
たとえば植物型のモンスターだったら火に弱いというのが一目瞭然。
ただ、あいつにはそういった弱点らしいものが思い浮かばない。
ゲームの知識で言うなら……なんとなく鋼っぽいので炎に弱そうか?
だとしたら熱を放つ魔鉱石が有効なんじゃないか?
「ぶつけてみるか?」
そうなってくると一気に原始的な感じになってくるな。
――というか、あいつはあいつでまったく何かを仕掛けてくるって気配を感じない。
そもそも敵意がないっぽいんだよなぁ。
もしかして、このまま何もしてこないんじゃないか?
俺は無言のまま、竜崎くんの手を自分の肩に回してゆっくり持ち上げる。息はしているようだが、こちらの呼びかけにまったく反応しない。気絶しているようだ。
「一体何があったっていうんだ……」
例の甲冑兵は結局何もしてきそうにないので、ここは一旦撤退するとしよう。
しかし、ここへ来てある問題が。
「うっ……重い……」
意識を失った成人男性を担ぐってこんなに重労働なのか。いや、大変だっていう認識はあったけどよもやここまでって感じだ。
でも、竜崎くんに何か異変が起きているのは間違いない。
一度ルナレナ様に診てもらって、それからこの世界の医療で治せないようなら向こうの世界の病院に頼るとしよう。
「待っていてくれ、竜崎くん……君は必ず助ける……」
思えば、彼の提案からこっちでの生活が始まったんだ。
もしあの場で竜崎くんに出会えなかったら、俺の人生は未だに暗転したままだったろう。
……変われるきっかけをくれたんだ。
そのお礼をしなくちゃと、ふらつく足をなんとか気力で動かしていく。せめてダンジョンを出れば精霊族がいるからな。
せめてそこまでもってくれよ、俺の体。
「はあ、はあ、はあ……」
疲労がたまり、速度がどんどん落ちている。急がなくてはいけないのに、体が言うことをきかなくなってきた。日頃からもっと体を動かしておくべきだったな。
――するとその時、突然竜崎くんの体が軽くなった。
「えっ?」
何事かと竜崎くんの方へ顔を向けると、そこにはあの自律型甲冑兵の姿が。
「て、手伝ってくれるのか?」
そう尋ねるも、甲冑兵は何も言わず。
まあ、会話機能みたいなのはさすがについてないよな。
AI的なものが搭載されているわけでもないだろうし。
でも、手伝ってくれるというならありがたい。
「感謝するよ」
こちらの気持ちが伝わっているかどうかは定かじゃないが、とりあえず協力をしてくれるというならお礼を言っておかないと。
あとは竜崎くんが意識を失った原因を調べなくちゃ。
ルナレナ様にも事情を説明しないとな。
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