第58話 元凶

 ついに突きとめた妙な魔力の正体。

 それは俺たちのすぐ近くにいる――が、ここである疑問が。


「あの魔力って……さっきまでここになかったよね?」

「そうっすね」

「てことは、さ……移動してる?」

「みたいっすね」

「じゃあ、あの魔力の持ち主は……」

「生き物――いや、この場合はモンスターと言った方がよさそうっすね」

「だよねぇ」


 やっぱりそう考えるのが自然だよなぁ。

 動き回っているってわけだし。


 ただ、そうなるとまたモンスターとの戦闘になるかもしれない。そいつがルナレナ様の力が弱まっていることと因果関係があるかどうかはまだハッキリしていないが……仮にそうだった場合はやはり倒さないといけないか。


 あと、大体そういう時って敵は強いっていうのが相場なんだよね。


 竜崎くんが規格外の力を持っているっていうのはさっきのカエル型モンスターとの戦闘でハッキリした。


 問題はそれに対抗できるだが……とにかく、まずは正体の確認が先だ。


「行こう、竜崎くん」

「それしかないっすね。でも、俺が先行するっすよ」

「うん。お願いする」


 即答。


 ……いや、ここは年長者として俺が行くべきなのだろうが、見た目は若者とはいえ彼の方がずっと年上だったりするし、そもそも落ちこぼれとはいえ聖竜族っていう特別な種族なので切り込み隊長にはうってつけだろう。


 もちろん、俺だっていつでも戦える準備をする。


 武器はキャンプ用ナイフ。

 そして熱を発する魔鉱石。

 こいつに熱を持たせて投げつければ立派な武器になる。


 うん。

 こうやって振り返ると、俺も結構戦えそうじゃないか。

 

 せっかく異世界のダンジョンに来ているんだ。

 何もしないまま帰るというのも味気ない。


 ここはひとつ派手に戦って華麗な勝利を治めようじゃないか。


 ――でも、できればモンスターでないことを願う。


「矢凪さん、めちゃくちゃヤバそうなモンスターがいたっすよ」

「…………」


 希望は脆くも崩れ去った。

 こうなれば、やるしかないか。


「竜崎くん……つかぬことを聞くけど……どれくらいヤバそう?」

「今すぐここから逃げた方がいいかもしれないっす」

「そこまで!?」


 あの竜崎くんをここまで怯えさせるなんて。

 一体どれだけとんでもないモンスターがいるっていうんだ。


 俺は竜崎くんと入れ替わる形で岩陰からこっそりとそのモンスターの姿をチェック。

 すると、そこには――


「うん? あ、あいつ?」


 そこにいたのは使い古された甲冑だった。

 最初は誰かの忘れ物かと思ったが、どうもあそこから魔力が漏れている。


 やっぱり、あいつが元凶か。


「でも、甲冑がどうして……」

「矢凪さん、迂闊に近づくのは危険っすよ」

「ど、どうし――なっ!?」


 竜崎くんへ理由を尋ねようとした瞬間、その甲冑はゆっくりと立ち上がった。

 

「な、中に人がいるのか?」

「いえ、空っぽです」

「じゃあどうして動いているんだよ!?」

「それはヤツが……自律型甲冑兵だからっす」

「じ、自律型?」


 何その不穏すぎるワード!?

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