第57話 魔力習得
ダンジョン探索中に実施された魔鉱石テスト。
こいつが熱を帯びてくれたら、俺の全身から出ている魔力をうまく操作できたことになる。
「ぐぅ……」
竜崎くんのアドバイス(と言えるかどうか分からないくらいざっくばらんとした内容だったけど)に従い、本能の赴くままに魔力を……ていうか、ただ力んでいるだけじゃないか、これは。
「どうっすか、熱くなってきたっすか?」
「い、いや、今のところは――って、あれ?」
会話をしている途中で、俺は手から伝わる違和感に声をあげた。
なんだろうと思いながらジッと魔鉱石を見つめていると、やがてその正体に気づく。
「あっつ!?!?」
熱だ。
さっきまでちょっと冷たいくらいだった魔鉱石は燃えるように熱くなっていて、よく見ると赤みも増している。
――ってことはつまり……俺は自分の魔力を操作できたのか。
全然実感が湧かないんだけど。
「凄いじゃないっすか、矢凪さん!」
「えっ?」
いつの間にか竜崎くんは熱さで放り投げてしまった魔鉱石を手に微笑んでいた。
「もしかしなくても、あっちの世界の人間で魔法を使ったのは矢凪さんが世界初っすよ!」
「そ、そうなのか!? いやでも、あんまり魔法って感じがしないなぁ」
確かに、あっちの世界で魔法といえば創作の世界でしか見られない代物だ。
でも、ルナレナ様や竜崎くんの話では、あっちの世界の人間もこちらの人間に比べたらごくわずかでも魔力を有しているって話だった。
つまり、練習次第で誰でも魔法を使えるってわけだ。
「新しい可能性を見いだせた気分だよ。贅沢を言えば、もっと派手に炎や雷とか使ってみたいけどね」
「それにはまだまだ鍛錬が必要っすね」
「ああ。これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします、竜崎師匠」
「うむ。苦しゅうない」
――などといつもの調子で話し合っていたら、急に異様な気配を感じ取る。
「い、今のって……」
「どうやら例の魔力ってヤツのお出ましみたいっすね」
ちょうど魔力の操作を習得した直後だったので、俺にもハッキリ分かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます