第56話 魔力を操ってみよう
竜崎くんの言葉を信じて右の道を選択。
真っ直ぐ進んでいくと、だんだん道幅が狭くなっていることに気づく。
「あれ? もしかしてこのままいくと……行き止まりになっちゃわないか?」
「うーん、こっちじゃなかったっすかねぇ」
ペロッと舌を出し、「やっちゃいました」って感じのリアクションを見せる竜崎くん。ここまで結構歩いたけど、戻る時は転移魔法のおかげで一瞬だから修正しやすいというのがいい点だよなぁ。
「それじゃあ、さっきの分かれ道へ――あれ?」
戻ろうと提案しようとした俺の視界に飛び込んできたのは……怪しく光る石だった。
「どうかしたんすか、矢凪さん」
「いや、あそこに光っている石があるなぁって」
「光る石? ――ああ、魔鉱石っすね」
「魔鉱石?」
名前からして、魔力を有した鉱石っぽい。
そういえば、昔プレイしたゲームにも似たような要素があったな。ゲームでは属性ごとに分かれていて、魔力を注げばその属性の効果が得られるという物。
「もしかして……とても貴重なアイテムなんじゃないか?」
「物によるっすね。あれは赤く光っているから炎属性――いろんなダンジョンで採取報告がある魔鉱石っす」
「へぇ」
新しい情報に感心するけど、やけに詳しいな。
「竜崎くん、魔鉱石について詳しいんだね」
「聖竜族の里ではポピュラーなアイテムっすから」
「あぁ、なるほど」
確かに、こいつは異世界の一般家庭には必要不可欠な物だろうな。火をおこしたり水を調達したり、いろんな場面で役に立ちそうだし。
「ていうか、キャンプにも役立ちそうだな」
「そうっすか? 矢凪さんが暮らしていた世界の固形燃料の方がよっぽど優秀っすよ」
「いや、それはそうかもしれないけどさ……」
なんていうか、風情がないんだよねぇ。
魔力を使って自然の力を利用する――そこにロマンがあるんじゃないか。
というわけで、俺はこれまでの成果を確認する意味も込めて赤い魔鉱石を手にする。
「よし……魔力を込められるか試してみよう」
「おぉ! やってみてくださいっす!」
竜崎くんの応援を背に、俺は手にした魔鉱石へ魔力を注ぐ――と言っても、具体的にどうやればいいのかよく分からない。
ヒントを竜崎くんへ求めたのだが、「本能に身を任せるっす」というふんわりしたアドバイスのみ。
本能って……とりあえず、やってみるか。
「むむぅ……」
目を閉じ、魔鉱石を持つ手に意識を集中させる。
果たして魔力を上手に操れるだろうか。
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