第38話 初めての現代日本にて

 マルディーニさんとともに訪れたいつもの道の駅。

 日曜日でしかも移動動物園が来ているため、子どもが多い印象だ。


 ……というか、今日って日曜日だったんだな。


 最近はすっかり生活ベースが異世界の魔境になっていたからな。あっちだと曜日感覚なくなるから大変だ。


 毎日が休日――じゃないな。

 基本的に毎日働いている。


 妙だな……ルナレナ様が最初に提示した労働条件ってもうちょっと緩かったような気がするんだけど。

 まあ、楽しんでやれているからいいか。

 早く魔法も覚えたいし、スキルってヤツも身につけたい。

こっちの世界のスキルはまったく身につける気にならなかったけどな。


 その移動動物園は道の駅の裏手に特別スペースという形で設けられている。


「ここって、普段はドッグレースやる場所だよね?」

「そうっすね。だから、連れてきている動物も基本的には小動物みたいっすよ。看板にも『ふれあい広場』ってあるし」

「あっ、ホントだ」

 

 ヤギやハムスター、ポニーにアヒル、ハリネズミまでいるけど、みんな基本的には小さい動物だけ。その方が子どもたちも手を触れられるし、予算的にも懐に優しい感じか。


「わあ! めっっっっちゃ可愛い!!」


 ルナレナ様は動物たちをひと目見るなり瞳にハートを浮かべながら突撃していく。

 それをジッと見つめる、神の力で言葉を話せなくなったマルディーニさん。


『吾輩の方が可愛いが?』


 とでも言いたげな表情だ。

 幸いと言うべきか、あの中にウサギはいない。マルディーニさんが紛れ込んで区別がつかなくなるというのが一番恐れていた事態だけは回避できたようだ。


 ――と、思っていたら、ここで予想外の刺客が登場する。


「あっ! うさちゃんだ!」


 俺が抱きかかえているマルディーニさんを指さしてそう叫んだのは小学校一、二年生くらいの女の子三人組だった。


「可愛い!」

「おじさんのペットなの?」

「えっ? いや、この方は――」


 なんとか誤魔化そうとする俺の手を押しのけて少女たちの前へ出たマルディーニさん。得意げに頭を突き出すその姿勢は『撫でるがよい』と語りかけているように映る。


「わっ、撫でてもいいの?」

「やったぁ!」

「もふもふだ~」


 あっという間に大人気となるマルディーニさん。

 本人――いや、本兎的にも満足そうだからあれでいいのかな。

 というか、もしかして愛でられるのが真の目的だったとか?

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