第8話 新しい女神は創造神

 創造の女神ルナレナ様が用意したログハウス。

 一瞬にしてこれほど立派な家を建ててしまうなんて……建築基準法とかどうなってんだって尋ねたいが、よくよく考えたらここは異世界だからそんな物は必要もないか。ようは住みやすいかどうかって話だ。


 というわけで、早速中へと足を踏み入れてみた。

 感想は――めちゃくちゃ住みやすそう。

 まず一階部分にはキッチン、風呂、トイレがある。ルナレナ様曰く、住居に関しては慣れている方がいいだろうからと俺の故郷である日本の一般的な住宅をモデルにして生みだしたらしい。

 その心遣いは二階にも見られた。

 階段を上った先にある寝室にはデスクワークにちょうどよさそうな机に黒いリクライニングチェアが設えられていた。


「これはいいなぁ。パソコンを置けたら文句ないんだけど」

「何か問題でもあった?」

「ネット環境がないからなぁ」

「あるけど?」

「へっ?」


 まさかの言葉に驚く。

 本当にできるのかどうか確かめるため、持ってきたノートパソコンを置くが……そういえばコンセントってないよな。


「電源を確保できないとなると、長時間の使用は難しいか」

「それも問題ない。ほれ、あそこに」


 ルナレナ様が指さす方向にあったのはまさかのタコ足配線。

 便利っちゃ便利だけど、これどこから電力持ってきているんだ?


「この世界に電力なんてあるんですか!?」

「そんな物はない。あなたの世界からちょっと拝借しているだけだ」

「は、拝借って……」


 そんなことが可能なのかと尋ねようとした時、俺は彼女の正体を思い出して納得した。

 創造の女神ルナレナ。

 俺がかつて住んでいた世界と、今滞在している世界のふたつを創り出した神。


 力が弱まっているらしいが、それでもやはり神は神。

 この程度はお手の物というわけか。


 しかし、ここまでの流れを見る限り、あまり困っているように見えないけどな。

 そんなことを考えながらノートパソコンを設置して電源をオン。


「お? 本当につながったよ……」


 マジか。

 一歩外に出れば剣や魔法やドラゴンのいるファンタジーな世界だというのに、このログハウス内は日本の一般住宅と環境は変わらない。


「それで集めたデータをレポートにして提出してもらいたい」

「魔境調査の報告書ってわけか」

「そう捉えてもらえて問題ない。何について調べたらいいのか見当もつかないだろうから、仕事のパートナーとして竜崎を補佐につけよう」

「よろしくお願いしまっす!」


 竜崎くんが手伝ってくれるなら心強い。

 

「あなたたちはもう交流済みのようだし、これから実際に魔境を見て回ってきたら?」

「いいっすね! そうしましょうよ、隆也さん! いろいろ説明するっすよ!」

「そうだな。俺もこの世界がどんな場所か、もっと知りたいし」


 ルナレナ様の提案により、早速これから職場となる異世界の魔境を探索しにいくか。

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