第7話 ジャージ姿の女神様
「待っていたぞ、矢凪隆也」
振り返った創造の女神ルナレナ様は俺の予想以上に――普通の女の子だった。
正直、駅前ですれ違っても地元の女子高生かなって思う程度であり、まかり間違っても女神様なんて発想には至らないだろう。
だが、さっき俺の名を呼んだ声は間違いなく夢の中で聞いた声と同じだった。
「どうした? 呆けた顔をして」
ショートカットの茶髪を揺らしながら近づき、丸くて大きな青い瞳でジッとこちらを見つめる創造の女神様。
やはりどう見ても十代半ばほどの可愛らしい女の子にしか見えない。
「ははーん、さては私が創造の女神かどうか疑っているな?」
「っ!? こ、心を読まれた!?」
「いや、めちゃくちゃ分かりやすいっすよ、矢凪さん」
冷静にツッコミを入れてくる竜崎くん。
そんなに分かりやすかったかな……今度から気をつけよう。
「まあ、無理もないか。むしろ疑ってくれた方が私としては嬉しい。何せ君が委縮しないようなるべく見慣れた格好で現れようと研究した成果が出ているのだからね」
「け、研究?」
「ホーリス――ああ、そっちの世界では竜崎と名乗っているんだったね。その竜崎に君の世界の情報をいろいろと仕入れてもらったのさ。創造の女神とはいえ、それぞれの世界の文化がどのような変化を遂げているかまでは分からなくてね」
えらく饒舌に喋る創造の女神。
夢の中ではもうちょっと威厳のある話し方だったと思うのだが……これも研究とやらの成果だろうか。
「ともかく、来てくれて嬉しいよ。私は君の到着を心待ちにしていたからね」
「そ、そうなんですか?」
「もちろん。あっ、そうだ。約束通り、魔境探索のための拠点をプレゼントするよ」
ルナレナ様はそう言うとパチンと指を鳴らす。
直後、いつの間にか目の前に立派なログハウスが建っていた。
「す、凄い……一瞬にして家が建った……」
「これが神の力というものだ」
ドア顔で語るルナレナ様だが、そんな態度を取っても許されるとんでもない力だ。
ここへきて、俺はようやくここに至るまでのすべての話が真実であったのだと理解した。
「さあ、詳しい今後の話については中でゆっくりとしようじゃないか」
「は、はあ……」
ルナレナ様に導かれるようにして、俺と竜崎くんはログハウスの中へと足を踏み入れるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます